
本記事ではITストラテジストの午後II(論文)対策として、
令和7年問1で出題された過去問を分析します。
実際に論文を書く上での考え方を整理し
論文骨子を設計するところまでやっていきます。
問題(令和7年問1)

過去問は試験センターから引用しています。

設問文は以下の通り。

何が問われているかを把握する
設問アは「事業概要と事業特性」「基幹システムの概要と課題」を問われています。
この中で「課題」については問題文の第一、第二段落に例示がありますので
どのような課題を設定するのがよいか参考にしましょう。
設問イは、「基幹システムの刷新方針」について述べることになりますが
「刷新することの必要性」「経営上の有効性」「重要と考えて工夫したこと」
を盛り込む必要があります。
「重要と考えて工夫したこと」の例としては、問題文の第四段落
(箇条書きのある次の段落の「そして、」で始まる段落)に
検討ポイントがあるので参考にするとよいでしょう。
設問ウは、「事業部門との交渉・調整」「経営層への説明」「経営層の評価と改善点」
が問われています。経営層への説明と指摘の改善はITストラテジストの
設問ウの典型的な設問です。
出題要旨と採点講評からの分析

試験センターから公表されている出題要旨と採点講評を確認して
出題の意図と論述のNG例を把握します。
出題趣旨

出題趣旨の1文目に、
システム構造が複雑化していたり、最新技術が適用できない旧式のIT
という記述がありますが、設問アで問われる「基幹システムの課題」の
主な例であると言えます。
IPAはDX(デジタルトランスフォーメーション)を標榜・推進していますが、
複雑化・陳腐化しているシステム構造が阻害要因であると考えられます。
ITストラテジストは、阻害要因を明確にしたうえでDXのためのシステム整備や
構想を打ち立てていくことが求められています。
2文目には
刷新することの必要性や経営上の有効性
事業部門との交渉や調整を行ったこと
とありますが、前者は設問イに、後者は設問ウで問われています。
いずれも、3文目に書かれている通り、
基幹システムの刷新方針を策定する能力
事業部門との交渉や調整を行い、経営層から承認を得る能力
を示すという意識で論述する必要があります。
採点講評

「全問共通」の採点講評はここ数年同じことが書かれており、
"論述の対象とする構想、計画策定、システム開発などの概要"が適切に記述されていないものが散見された
とあります。
論文用紙の前にある、下の画像のような論述の概要を記載する用紙ですね。

試験センターも明確に「評価の対象」と言っているので、
手を抜かずに記入しましょう。
聞かれる項目はほぼ毎回同じなので、
予め回答を想定して準備しておきましょう。
また、今年は
システム規模、総額などの整合性がとれないものが散見された
というNG例が記載されています。
"論述の対象とする構想、計画策定、システム開発などの概要"には
規模や総額を記載する欄がありますが、明らかに不適切な数値や金額が
記載されている場合、専門性を疑われるので注意しましょう。

問1の採点講評の2文目には次のNG例が紹介されています。
- 基幹システムの技術的な課題の解決だけを目指して、古いIT基盤をクラウド基盤に更改するなどの論述
NGの要素は一言でいうと"技術偏重"ということでしょう。
システムの技術面だけを課題として取り、構成を変えるから解決する、
という論旨だとNGであることが分かります。
また3文目には次のNG例が紹介されています。
- 刷新方針として、段階的な刷新や業務改革だけの論述にとどまり、新しいシステム構造やITへの具体的な言及が不足している論述
NGの要素は先ほどとは逆に、しいて言うと"業務偏重"ということでしょう。
業務のみ、あるいは経営的な観点のみで論述するとシステム構造や技術面が
ないがしろになり、これも専門性や能力を疑われることになります。
技術面と業務面、さらに経営的か観点も踏まえ、バランスよく関連付けて
論述するようにしましょう。
どのように論文を設計すればNG例に抵触しないか、
次節より説明していきます。
論文を設計する

問われていることの概略を把握したら
自身の経験や用意してきた論文パーツに当てはめて
どのように論述を展開するかを設計します。
設問アの設計
設問アは「事業概要と事業特性」「基幹システムの概要と課題」
を問われています。
論述対象の事業は、基幹システムを持ち得るものであれば
何でもよいと思います。
基幹システムは、のちにDX等に向けた改修をするには複雑で陳腐化
している状況にあるものを論じるとよいでしょう。
問題文にヒントを求めると、
IT基盤を長期にわたって維持、改修してきた結果、システム構造が複雑化していたり、最新技術が適用できない旧式のITであったり
という文が第一段落に書かれていますが、いわゆるレガシーと呼ばれる
システムの多くはこのような状況にあるものと思われます。
この状況にあると何が「課題」であるかというと、
担当するIT要員のスキルが継承できなかったり
必要なIT要員が確保できなかったり
企業が進める業務の変革に迅速に対応できなかったり
IT運用・保守費用がかさみ新たなサービスへのIT投資が捻出できなかったり
といったものが、第二段落にある通り、主に挙げられます。
これらの論述の構造を満たすには、一定の年数を経ており、比較的
規模の大きい事業を論述対象に選ぶのがよいでしょう。
スタートアップなどの新しい事業は旧式といえるほどシステムが古く
なっていなかったり、小ぶりな事業は基幹システムを展開するほど
の理由がなかったりするためです。
論述対象の基幹システムについても、販売系、生産管理系、財務系など
どれでも良いと思いますが、設問ウにおいて「事業部門との交渉や調整」を
論じる必要があることから、設問アの時点で具体的な事業部門と特徴について
紹介しておくようにしましょう。
設問イの設計
設問イでは「基幹システムの刷新方針」について述べることになりますが
「刷新することの必要性」「経営上の有効性」「重要と考えて工夫したこと」
を盛り込む必要があります。
採点講評で確認した通り、"技術偏重"でも"業務・経営偏重"でもいけないので、
「刷新することの必要性」は技術面から入って業務をどう改善できるか、
「経営上の有効性」では業務プロセスの改善等を根拠に経営上のメリットが
何かを説明しましょう。
下記に、「刷新することの必要性」の例についてまとめます。

刷新の必要性(技術面・業務面)の例
「課題」や「リスク」を示した上で、
基幹システムを刷新することが、「どのように」課題を解決するか
記載することが重要です。
「どのように」の部分には、システム構成や採用技術などに触れ、
技術的な専門性があることをアピールしましょう。
下記に、「経営上の有効性」の例についてまとめます。

経営上の有効性の例
基幹システムを刷新することでどのような経営上の効果があるかを
説明しましょう。
また、設問イでは「あなたが特に重要と考えて工夫したこと」に
ついても言及が必要です。
問題文からは
- 刷新によって実現される業務プロセス
- 業務や組織の必要な見直し方法
- 優先度を考慮した段階的な移行
- 刷新の効果と費用
などといった観点が示されているので参考にしましょう。
全て盛り込む必要はありません。
設問ウの設計
設問ウは、「事業部門との交渉・調整」「経営層への説明」「経営層の評価と改善点」
が問われています。経営層への説明と指摘の改善はITストラテジストの
設問ウの典型的な設問です。
「事業部門との交渉・調整」は設問アですでに触れた「事業概要」「事業特性」
に絡めて論述できるとよいでしょう。
「経営層の評価」は典型的な設問なのでいくつか汎用的に
論述できる"論文パーツ"をストックしておくとよいでしょう。
例えば、「費用対効果」「刷新に伴うリスク」
「経営指標やKPIとの連動性」「投資回収スケジュール」
などが主な論点となるでしょう。
論文骨子

論文骨子の一例を示します。
■設問ア
1.基幹システムの刷新方針の背景
1-1.事業概要と事業特性
A社は部品の製造機械や制御部品を製造・販売する企業。
事業特性:
・唯一品として製造する機械や部品が少なくない
・独自にカスタマイズされた製造プロセスやシステムが多い
1-2.基幹システムの概要と課題
主な基幹システム:
①生産管理部門が主に使用する製造計画管理
②販売部門が主に使用する受注・売上管理
③製造部門が主に使用する製造工程管理・在庫管理
課題:
・独自にカスタマイズされたサブシステムが乱立
・ベテラン社員による非公式の手作業プロセスが多い
・SIerしかソースコードを理解していないものもある
■設問イ
2.基幹システムの刷新方針の策定
2-1.刷新の必要性
(1)ソースコードの可読性・保守性が低下
(2)システムに合わせた業務運用が続き、業務改善提
案や自動化が阻まれる。
リファクタリングを行うことで、ベテラン社員でなく
とも保守が可能になる。
マイクロアーキテクチャを採用し業務間の依存関係
を最小化することで、今後の業務改善をしやすくする。
2-2.経営上の有効性
・全社で統一されたデータをリアルタイムで活用し、
経営判断の即時化を実現
・業務プロセスを標準化・統合することにより、新規
製品製造のための投資判断を迅速化
・運用保守の自動化・効率化により、基幹システムの
運用コストを20~30%削減
2-3.策定した刷新方針と工夫した点
製造計画管理や製造工程管理のメニューにおいて、
工場・拠点別にチューニングができるように設計する
よう工夫。
A社の情報システム部門を従来の「維持管理」から
「事業価値創出」へと役割転換し、人材活用と
組織変革を盛り込むこと。
■設問ウ
3.事業部門との交渉・調整や経営層への説明
3-1.事業部門との交渉・調整
既存業務に執着・愛着のある現場部門から
一定の反発が生じることが予見。
A社の中長期計画においてもDXを実現し
既存業態を改革するという経営層からのメッセージも
あるため、販売部門・生産管理部門・製造部門への
説明には全社方針である旨を含めて調整を主導。
3-2.経営層への説明と評価・改善点
経営層へはA社中長期計画におけるDX実現の布石に
なるという点を盛り込み経営戦略との整合性を踏まえて
説明した。
経営層からは、過去にも同様の構想があったが実現し
なかったケースがあることが指摘された。
私は今回の基幹システムの刷新構想は
段階的導入をすることでリスクを分散できることを
説明し推進の承認を得た。
以 上
論文全文について
ここまででも十分考え方はお伝え出来たかと思いますが、
論文全文を参考にされたい方は有料とはなりますが
以下記事の末尾をご参照ください。
note.com
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本記事ではITストラテジストの午後II(論文)対策として、
令和7年問1で出題された論文の書き方を紹介しました。
基幹システムに題材が絞られた形式は令和に入ってからは
珍しい出題であったと思われます。
私自身の受験記もまとめているので合わせて参考にしてください。
また、他の区分・過去問の【論文の書き方】の記事については
以下リンクを参照ください。
論文の書き方 カテゴリーの記事一覧 - スタディルーム by rolerole
今後も、【論文の書き方】記事を充実して参ります。
ではそれまで。