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プロジェクトマネージャー 感染症流行への対策(PJ計画の修整)【論文の書き方】(令和5年秋問1)

本記事ではプロジェクトマネージャーの午後II(論文)対策として、

令和5年問1で出題された過去問を分析します。

 

モチーフとして「感染症流行への対策」として扱います。

 

実際に論文を書く上での考え方を整理し

論文骨子を設計するところまでやっていきます。

 

 

 

問題(令和5年問1)

過去問は試験センターから引用しています。

表題:『プロジェクトマネジメント計画の修整(テーラリング)について』

 

設問文は以下の通り。

 

何が問われているかを把握する

本問のポイントは「修整」という考え方です。

軌道修正の「修正」ではなく、「修整」という、

実生活では聞きなれない言葉です。

 

「修整」について説明する前に、「計画フェーズ」と「実行フェーズ」

について説明します。

 

前提として、プロジェクトの「計画フェーズ」と「実行フェーズ」は

全く異なるフェーズであることは理解しなくてはなりません。

 

プロジェクトの計画中と実行中

「計画フェーズ」と「実行フェーズ」の主な対比は上記の通りです。

 

本問の場合は、「計画フェーズ」において策定する各種基準

(問題文では「プロジェクトマネジメント計画」や

「マネジメントの方法」と記載)について、

既存の標準や前例から「修整」して適用することを問われています。

 

修整(テーラリング)とは

上図のように、標準や前例から

  • どのように修整(テーラリング)して適用したか
  • そのまま適用しなかった理由は何か

といった点が本問の主題となっています。

 

それでは、中身について確認していきましょう。

 

出題要旨と採点講評からの分析

 

試験センターから公表されている出題要旨と採点講評を確認して

出題の意図と論述のNG例を把握します。

 

出題要旨

 

出題要旨の2文目に次の記述があります。

個々のプロジェクトの独自性を考慮して修整(テーラリング)することが重要

「個々のプロジェクトの独自性」は設問アで特徴として述べておきましょう。

設問イで「なぜ修整して適用したか」の理由として、「プロジェクトの独自性」

を根拠とするのが説得力のある組み立てとなります。

 

出題要旨の2文目には次の記述があります。

「マネジメントの方法をどのように修正し」

「どのようにモニタリングし」

「結果にどのように対応したか」

1点目は設問イで論述する部分であり、計画フェーズです。

2,3点目は設問ウで論述する部分であり、実行フェーズです。

 

設問イと設問ウで論述する部分はフェーズが異なるので、

時系列を意識して論述する必要があります。

 

 

採点講評

はじめに「全問共通」の採点講評ですが、

自らの考えや行動に関する記述が希薄な論文

経験が感じられない論述

などは毎年のように講評されている部分です。

 

当ブログでは何度も述べていますが、

受験者に「実際の経験」は不要です。

「経験があると感じさせる」論述が書ければよいです。

 

具体的には、教科書や一般論をなぞっただけではなく、

問題文に与えられたテーマや状況と、

プロジェクトの特徴・独自性を踏まえた論述が書けていることが

ポイントです。

 

上記がピンとこない方は、本問を例にどのように論述して

ゆけばよいかを説明していきます。

 

 

問1の採点講評によると、

実行中に発生した課題に対応する計画変更

を修整(テーラリング)と書いているNG例があったと述べられています。

出題条件が「計画フェーズ」であるのに「実行フェーズ」について

論述しているので、フェーズの誤認が原因です。

 

また

プロジェクトの目標達成に適合していない修整

もNG例として述べられています。

設問アで述べるプロジェクトの目標達成に繋がっていない修整では

説得力がありません。

目標との関連を意識して修整する内容を論述しましょう。

 

 

論文を設計する

問われていることの概略を把握したら

自身の経験や用意してきた論文パーツに当てはめて

どのように論述を展開するかを設計します。

 

 

設問アの設計

設問アは「プロジェクトの目標」

「重要と考えたプロジェクトマネジメントの対象とその理由」

の2点について問われています。

 

一例としてはこの2点をそれぞれ1-1、1-2節として

論文を設計すると書きやすいと思います。

 

考慮が必要な点としては、「重要と考えたプロジェクトマネジメントの対象」

の条件として「時間・コスト・品質以外」と挙げられていることです。

「時間・コスト・品質」はQCD(Quality(品質)・Cost(コスト)・時間(Delivery))とも言われ

プロジェクトマネジメントでは最重要なので、

計画段階の修整(テーラリング)の余地が少ないため、

除外されたものと思われます。

 

「時間・コスト・品質以外」の例として、問題文中には以下があります。

リスク、スコープ、ステークホルダ、プロジェクトチーム、コミュニケーションなど

PMBOKなどの標準には他のマネジメント対象もあるので、

論述できれば上記以外の対象でもよいですが、

思いつかなければ上述の例から一つ選ぶのが無難でしょう。

 

設問アでは「プロジェクトの目標」も問われているので

なぜその「マネジメントの対象が重要か」といった理由についても

プロジェクトの目標に沿ったものにしましょう。

 

 

1-1、1-2節の関係を図で示すと次の通りです。

 

設問アの構造



一例として、本記事ではプロジェクトの目標として

「競争力強化のための新機能リリース」「納期必達」

を挙げています。

 

また重要と考えたマネジメント対象として

「コミュニケーション管理」を挙げています。

その理由として「感染症流行」という状況を述べています。

 

感染症流行」があったために従来の標準や前例が機能せず、

Web会議などの非接触コミュニケーションを推進する必要がある点を

主に修整(テーラリング)が必要だったと述べてゆきます。

 

なお、修整(テーラリング)が不要だった例も盛り込むと、

 

  • 何が重要か(修整が必要)
  • 何が重要でないか(修整が不要)

 

の対比で説明できるため説得力が増すと思います。

 

本記事の場合、「協力会社との共同開発」をプロジェクトの特徴としており、

「前例をそのまま適用できるから重要なマネジメントの対象とは

しなかった」という組み立てとしました。

 

 

設問イの設計

設問イはマネジメントの方法を修整した内容と理由について

問われています。

 

今一度、問題文で説明されている「修整」とは何かということ

について整理しておきましょう。

 

修整とは

 

上の図の通り、

  1. 「リスク、スコープなどのPMの対象に関して」
  2. 「マネジメントの役割、責任、組織、プロセスなどを定義する際に」
  3. 「参照した標準や前例から個々のPJの独自性を考慮して修整(変更して適用)すること」

です。

 

このうち、1.の「PMの対象」については設問アですでに述べています。

また 3. の「個々のPJの独自性」についても、設問アでPJの目標や

特徴・背景として述べられていることが望ましいでしょう。

 

また、3.の「参照した標準や前例」からの変更点がすなわち修整の内容と

なるので、まずは「参照した標準や前例」から書きだすのが書きやすいと

思います。

 

「参照した標準や前例」は具体的には、

所属する会社や組織のプロジェクト標準、

蓄積されているノウハウ、前例となる記録

などが考えられるでしょう。

 

「修整の内容」の書き方ですが、2.の「役割、責任、組織、プロセスなど」

を意識して書く必要があります。

「参照した標準や前例」では2.の何がどのように定義されており、

今回はそれをどのように変更して適用(修整)したかを書くイメージです。

 

ここまでをまとめると、以下の図の通りです。

 

設問イの構造

 

さて、本記事の場合、感染症流行への対策のため「コミュニケーション」に

関するマネジメントの方法を修整(テーラリング)したという骨子です。

設問イで何を述べるかと言うと、

はじめに「標準や前例」としては会社標準のプロジェクトマネジメント標準の

コミュニケーション管理の項に、

各ステークホルダの情報のニーズに対する要求事項の分析を行うことを前提として、①ツール②会議体③役割の定義を行う

という記載があることを書きました。

上述の①ツール②会議体③役割が問題文中にある「マネジメントの方法」を

意識したものになっています。

 

①ツールと②会議体においては、

Web会議に最適なツールの選定を行うこと、

対面会議は極力排すること、

それによるコミュニケーション不足を補うため個々のチームで

1on1会議(一人対一人のWeb会議)を推奨することなどを

定義づけました。

 

③役割については、PMOの役割について論じました。

プロジェクト標準には、PMOはメイン会議のファシリテーター・運営を

行う程度の役割にとどまっていますが、

今回のプロジェクトにおいては、それらに加えて

Web会議ツールのメンバーへのレクチャやQandAに対応することを

述べました。

 

いずれも理由としては、

テレワークを推奨する働き方に対応するためであり、

テレワークによるコミュニケーションの非効率性を最低限に

するため、というように組み立てました。

 

 

設問ウの設計

設問ウでは設問ア、イまでとは異なり「実行フェーズ」についても

問われています。

より正確に言うと、

「修整の有効性のモニタリング」は計画フェーズで定義し、

「モニタリングの結果と対応」は実行フェーズ、という時系列です。

 

計画フェーズで"基準"を定め、実行フェーズで生じた問題を

"基準をもとに対応する"という形はPM区分の

典型的な構図です。

 

本問の場合は、設問イまでで論じた「修整」の有効性を

どのようにモニタリングするか、を定めます。

その後 定めたモニタリングの結果を実行フェーズの期間中に

追いかけ、結果についてどのように対応したかを論じます。

 

本記事の場合、感染症流行への対策としての「修整」を定義しています。

モニタリングの方法としては、

①Web会議の実施記録数と成果物の推移の観測

②ツールの使い勝手に対するアンケート

としています。

 

①は、成果物のアウトプット数が目標に反して少ない場合に、

Web会議の実施記録数が鈍化していたとしたら、

Web会議を前提としたコミュニケーションに支障が出ていると

仮定することができます。

 

②は、ツールの使い勝手に対するアンケート結果から、

プロジェクトへの不満や不調の予兆を掴み取ることを

狙いとしています。

 

 

論文骨子

以上を踏まえ、論文骨子は次のようになりました。

1.プロジェクトの目標ならびに目標達成に重要と考えたプロジェクトマネジメントの対象
 1-1.プロジェクトの目標
 販売管理システムの刷新
 目標:競争力強化を目的とした新機能リリース、2021年4月までのシステムリリース
 特徴:システム受託会社との共同開発
 1-2.重要なプロジェクトマネジメントの対象
 対象:コミュニケーション管理
 理由:2020年当時が感染症流行への対策としてテレワークが推奨されており、目標達成が阻害される恐れがあったため
2.プロジェクトマネジメント計画の修整
 自社のプロジェクトマネジメント標準のコミュニケーション管理の項:

  各ステークホルダの情報のニーズに対する要求事項の分析を行うことを
  前提として、①ツール②会議体③役割の定義を行う

 (1)ツールと会議体について
  Web会議を含めたコミュニケーションツールについて選定
  性能面・機能面を備えるツールでないと効果的なコミュニケーションが阻害されるため

  1on1などの手法も駆使してコミュニケーション不足を補うことも推奨
 (2)役割について

  PMOの役割は会社の標準規定によれば会議のファシリテーターと運営に留まっていた

  Web会議のツールのメンバへのレクチャとQandAに答える役割を追加した
3.修整の有効性のモニタリングと評価
 3-1.修整の有効性のモニタリング

 (1)Web会議の実施記録数と成果物の推移の観測

 (2)Web会議のツールの使用勝手に関するアンケート

 3-2.モニタリングの評価と対応

 (1)設計フェーズにおいて成果物の推移で遅延が観測、Web会議も実施記録数が少なくなっている状況が観測された。

    特定のWeb会議に関する機能が阻害要因であったことが分かり、機能の活用法を周知した

 (2)アンケートには問題なく、有効性があると評価した。

論文全文について

ここまででも十分考え方はお伝え出来たかと思いますが、

論文全文を参考にされたい方は有料とはなりますが

以下記事の末尾をご参照ください。

note.com

 

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

本記事ではプロジェクトマネージャーの午後II(論文)対策として、

令和5年問1で出題された論文の書き方を紹介しました。

今回、プロジェクトの計画段階の"修整"がテーマであり、

従来の計画フェーズ(基準)ー実行フェーズ(基準の修正)の

単純な対比に比べると一段複雑な問題であったと思います。

また、「感染症流行への対策」という身近なモチーフも

論文に絡めることができる例を示したつもりです。

ぜひ参考にしてください。

 

また、他の区分・過去問の【論文の書き方】の記事については

以下リンクを参照ください。

論文の書き方 カテゴリーの記事一覧 - スタディルーム by rolerole

 

今後も、【論文の書き方】記事を充実して参ります。

ではそれまで。