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プロジェクトマネージャー チーム内の対立の解消【論文の書き方】(令和3年秋問1)

更新:2022/8/23

 

本記事ではプロジェクトマネージャーの午後II(論文)対策として、

令和3年問1で出題された過去問を分析します。

実際に論文を書く上での考え方を整理し

論文骨子を設計するところまでやっていきます。

 

 

 

問題(令和3年問1)

過去問は試験センターから引用しています。

表題:『システム開発プロジェクトにおけるプロジェクトチーム内の対立の解消について』

 

 

設問文は以下の通り。

 

何が問われているかを把握する

プロジェクトマネージャーの論文は

PMBOKの知識エリアに照らすとどの知識エリアについて

問われているのかを把握することが大切です。

 

本問題は組織マネジメントについて問われています。

 

PMBOKの各知識エリアに沿った論文対策については

次の記事を参照ください。

 

■プロジェクトマネージャーの論文対策■

第1節が組織・コミュニケーション・ステークホルダについて

書いているのでご確認ください。

studyrolerole.hatenablog.jp

 

ただPMBOKは新版(第7版)が発行されており、

アジャイルを念頭におくということでIPAシラバス

変更されています。

気になる方は合わせてこちらの記事も確認してみてください。

studyrolerole.hatenablog.jp

 

本問題は組織マネジメントの中でも「チーム内の対立の解消」が

テーマとして問われています。

組織マネジメントのテーマとしてはオーソドックスな内容と

いってよいと思います。

 

また想定される状況としては問題文や設問文に

以下の記載があります。

 

「作業の進め方をめぐって」

 

この記載から、メンバ間やサブチーム間の対立に絞って

論文の骨子を組み立てるのがよさそうです。

 

利用部門とシステム部門の対立やステークホルダ間の対立ですと

「作業の進め方をめぐる」対立とはならないだろうと

想定されるためです。

 

まとめると問われていることは次の通りです。

 

設問ア

 プロジェクトの特徴

 行動の基本原則

 対立の兆候

設問イ

 発生した対立

 対立の解消策・行動の基本原則の改善策

設問ウ

 対立の解消策・行動の基本原則の改善策の実施状況及び評価

 今後の改善点

 

出題要旨と採点講評からの分析

 

試験センターから公表されている出題要旨と採点講評を確認して

出題の意図と論述のNG例を把握します。

 

出題要旨

 

採点講評

 

 

出題要旨の2段落目に以下の記述があります。

「行動の基本原則を定めどのように対立を回避しようとしたのか」

「それでもなお対立が発生した場合、PMとしてその対立をどのように解消したのか」

「行動の基本原則をどのように改善し遵守させたか」

ここから、プロジェクトマネージャーとしてチームを運営するにあたり

行動の基本原則の定義と調整が重要であることが読み取れます。

 

行動に限らず、基本原則を定めることはマネジメントの基本です。

異常事態を判断するのにも基本原則が根拠となりますし、

異常状態からの復帰後は正常状態を維持するために

基本原則を調整することになるからです。

 

採点講評からは次のNG例が目を引きます。

「行動の基本原則がプロジェクトの特徴に即していない論述」

「対立の解消策が対立の内容や原因に対応していない論述」

 

前者は設問アで問われている

「プロジェクトの特徴」と「行動の基本原則」の

繋がりの妥当性を求めていることが分かります。

 

後者は設問イで問われている

「対立の内容」を原因まで掘り下げて論じたうえで

「対立の解消策」に繋げることの妥当性を

求めていることが分かります。

 

本問題のポイントは、

対立の具体的な内容・原因・解決を

行動の基本原則に重きを置いてマネジメントするという点

にあります。

 

論文を設計する

問われていることの概略を把握したら

自身の経験や用意してきた論文パーツに当てはめて

どのように論述を展開するかを設計します。

 

 

設問アの設計

設問アは「プロジェクトの特徴」「行動の基本原則」「対立の兆候」

について問われています。

 

採点講評のNG例を思い出してください。

「プロジェクトの特徴」は「行動の基本原則」と対応している必要があります。

「行動の基本原則」は設問イの対立の解消と改善策に関わるので、

論文全体の設計として着手するのは対立の内容と解消のシナリオにある

と言えます。

 

1-1. プロジェクトの特徴

「行動の基本原則」との対応を意識した特徴を入れることが必須です。

のちのち、「作業の進め方をめぐって」対立が起きることを念頭に置き、

私の場合は

1. リリースへの期待が高く遅延が許されない

2. チームメンバは平常業務の傍らプロジェクトにあたる

という特徴を入れました。

2点目はのちの確執の火種(ネタ振り)のニュアンスがあります。

 

設問アとしてはプロジェクトそのものの説明も必要なので

一文・二文触れておくとよいでしょう。

何のシステムか、何のプロジェクトか、

内製か外注かなどの簡単な枠組みが意識できればよいと思います。

 

1-2. 行動の基本原則

前節のプロジェクトの特徴を受けた内容にします。

私の場合は

1. リリースを最優先とする

2. 平常業務へ悪影響を与えないため、チーム間の依頼は平常時の手続きを守る

という内容を入れました。

 

2点目の具体的なイメージは依頼の受付窓口サイトが

平常時からあるので、

プロジェクトにおける依頼もその窓口を流用して

依頼の管理・対応を行い作業の均質化を図るといったところです。

 

1-3. 対立の兆候

対立の具体的な内容や原因分析は設問イがメインとなるので、

この節では一般的なプロジェクト管理上で異常を検知する手段に

ついて触れれば十分と思います。

 

たとえば進捗の伸びが期待値より下がっている、

定例会での指摘事項の対応が想定より時間がかかる、

意図しないタスクの滞留がある、

などが考えられると思います。

 

この時にプロジェクト全体におけるどのフェーズなのかを

明示しておくと展開しやすいと思います。

私の場合は開発環境における検証フェーズとして展開しました。

 

設問イの設計

設問文の問われ方は

「作業の進め方をめぐって」という指定があるので

チーム間やメンバ間の対立~原因分析~解決を

具体的に論述することが必要です。

 

論文上は、2-1.節で対立の内容と原因調査/ヒアリング、

2-2.節で原因分析/リーダー協議/解決策を論じるのがよいでしょう。

私の場合は 2-3.節として「改善後の行動の基本原則」を

設けましたが、これは2-2.節と合わせてもいいかもしれません。

 

2-1. 発生した対立

設問アで検知した兆候から、具体的な調査に乗り出します。

ここではプロジェクトメンバにヒアリングした体で対立の構図を

論述します。

 

私の場合はここで簡単にサブチームの紹介を行い、

次のように展開しました。

 

  • アプリチームからの依頼が頻発しインフラチームによる対応に時間がかかるようになっている。
  • インフラチームは本番環境の構築フェーズに入っており人的リソースが少ない。
  • 窓口規定のぎりぎり三営業日かかってしまう状況。規定は守れているが平常時より長くかかる。

 

現在がどのフェーズであるかも説明が必要で、

私の場合は 1-3. 節で触れています。

 

また対立の原因分析の折は現状の行動の基本原則にも触れ、

チーム間は互いに原則を遵守しているのにも関わらず

対立が起きてしまったということを盛り込むのがよいです。

これによりどちらのチームの立場にも立って

解決策を導こうとしている活動をアピールできます。

 

私の場合はこれを以下のように表現しました。

アプリチームとしてはリリース優先の方針のもと、

検証環境で本番にも耐えうる最適な構成を導き出すべく

効率的に検証を進めたいためインフラチームに協力を要請したい。

一方インフラチームとしては本番環境の構築フェーズに

差し掛かっており、リリース優先の方針に従えば

本番環境での作業を優先したい。

 

 

2-2. 対立の解消策

対立の構図を把握して対策のためにPMとして主体的に

活動している様子をアピールします。

 

各サブチームのリーダーと協議し、対策を考案したことを

論述しましょう。

 

問題点と解決策を具体的に論述する必要があります。

 

私の場合は、次のように展開しました。

(問題点)

 ・アプリチームの一部メンバの依頼の品質が低い

 ・対応するインフラチームもモチベーションが下がっている

(解決策)

 ・依頼時にリーダーの承認を得る

 ・施策を伝え依頼へも最短で対応するよう要請

 

2-3. チームの基本原則の改善策

ここでは前節の解決策を受けて改善した基本原則を書けばよいです。

私の場合は以下のように論述しました。

 

1. リリース最優先の方針は変わらず。
2. チーム間の依頼は所属するチームのレビュー・承認を得る。

 

さらに、出題要旨にもある通りこれをどのように

遵守させたかも問われています。

具体的には定例会の場での通知やメンバへの通達など

周知を徹底したことに触れればよいでしょう。

 

設問ウの設計

設問ウで問われていることは設問イまでの論述の

振り返りと今後の反省点ということで

典型的な設問でした。

 

あえて特徴的なところを言うと、

「解消策・改善策の実施状況」について触れる必要があり、

その点については具体的に論述する必要があります。

 

3-1. 解消策・改善策の実施状況及び評価

目に見えた問題点の解消として、進捗率の伸びの回復などが

考えられます。

実施状況を確認するには、依頼窓口の依頼を実際に確認して

承認の記録があるかをチェックするのがよいでしょう。

※このチェックの観点はシステム監査技術者でも問われるところです

 

評価としては次の節に改善点について触れるところがあるので、

ここでは良かった点についていくつか触れるとよいでしょう。

 

私の場合は次のことを書きました。

レビューを通すことにより不要な依頼も減った。

チーム全体の効率性があがり、プロジェクト全体の品質向上に寄与。

 

3-2. 今後の改善点

今回のことを受けて、今後に活かせることを書きましょう。

どのようなことでもよいですが、プロジェクトマネジメントの

ノウハウとして今後も活用するという文脈がオーソドックス

だと思います。

 

私の場合は次のことを書きました。

認識の異なるチーム間の依頼が頻繁に発生するケースは

依頼自体の品質をあげる施策を組み込むよう、

プロジェクトマネジメントのノウハウとして整備。

 

 

論文骨子

以上を踏まえ、論文骨子は次のようになりました。

1.プロジェクトの特徴、行動の基本原則、対立の兆候
 1-1.プロジェクトの特徴
 スーパーマーケットT社の課金・請求システムのアップデート。
 (1)リリース遅延が許されない。
 (2)チームメンバは平常業務の傍らプロジェクトにあたる。
 1-2.定めた行動の基本原則
 (1)リリースを最優先。
 (2)平常業務へ悪影響を与えないため、
    チーム間の依頼は平常時の手続きを守る。
 1-3.察知した対立の兆候
 検証・開発フェーズで予定の進捗が出ない。
 指摘事項が確認される時間がかかるようになってきた。
2.発生した対立、その解消策と基本原則の改善策
 2-1.発生した対立
 プロジェクトチームはインフラチームとアプリチームに分かれる。
 (1)アプリチームからの依頼が頻発しインフラチームによる対応に
    時間がかかるようになっている。
 (2)インフラチームは本番環境の構築フェーズに入っており
    人的リソースが少ない。
 (3)窓口規定のぎりぎり三営業日かかってしまう状況。
    規定は守れているが平常時より長くかかる。
 2-2.対立の解消策
 各サブチームのリーダーと対策協議を主導。
 依頼自体の品質が低いため、対応モチベーションも下がっている状況が判明。
 アプリチームは依頼時にリーダーレビューと承認を得ることを対策に。
 2-3.チームの基本原則の改善策
 (1)リリース最優先の方針は変わらず。
 (2)チーム間の依頼は所属するチームのレビュー・承認を得る。
3.解消策・改善策の実施状況及び評価と今後の改善点
 3-1.解消策・改善策の実施状況及び評価
 進捗の伸びが期待値程度に回復。
 実際の依頼を確認しリーダーの承認取得済みかを確認。
 レビューを通すことにより不要な依頼も減り、
 プロジェクト全体の品質向上に寄与。
 3-2.今後の改善点
 認識の異なるチーム間の依頼が頻繁に発生するケースは
 依頼自体の品質をあげる施策を組み込むよう、
 プロジェクトマネジメントのノウハウとして整備。

 

論文全文について

ここまででも十分考え方はお伝え出来たかと思いますが、

論文全文を参考にされたい方は有料とはなりますが

以下記事の末尾をご参照ください。

note.com

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

本記事ではプロジェクトマネージャーの午後II(論文)対策として、

令和3年問1で出題された論文の書き方を紹介しました。

組織マネジメントは頻出の分野です。

人間関係の調整や板挟みにあった経験のある方は

多いと思いますが、

その内容を論文という形に落とし込む

練習を重ねてください。

 

自分の苦労談を論文という形で表現できるようになれば

実務上のマネジメントにも役に立てることができると思います。

 

また、他の区分・過去問の【論文の書き方】の記事については

以下リンクを参照ください。

論文の書き方 カテゴリーの記事一覧 - スタディルーム by rolerole

 

今後も、【論文の書き方】記事を充実して参ります。

ではそれまで。