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IPA シラバス 変更のまとめ ver4.9版【プロジェクトマネージャ】

2023/5/18 更新

 

2022年、IPAの試験要綱(シラバス)が更改されました。

2022年10月の秋の試験から適用されます。

変更範囲はプロジェクトマネージャ区分です。

 

PM志望者やプロジェクト管理に興味のある方で、

ウォーターフォールのプロジェクト管理は分かるけど、これからは何がどう変わるの?

今度初めてPM受けるんだけど、何を注意したらいいかわからない

と思っている方はありませんか?

 

本記事では、PM合格を目指す方やアジャイルに興味のある方向けに、

  • シラバス ver4.9 版の変更ポイントのまとめ
  • アジャイル型のプロジェクト管理についてIPAが言っていること
  • 合格に向けて2022年10月から注意すべきこと

について書きたいと思います。

 

 

1. IPA シラバス変更の概要

 

私が変わったと感じたところは次の3点です。

 

  • チームメイキングの重要性アップ
  • 変化や不確かさへの対応が必須
  • PMBOKのカラー低下

 

 

試験要綱(ver4.9)ならびに改訂の背景については

試験センターの記事をご参照ください。

www.jitec.ipa.go.jp

 

変更点は「試験の対象者像」と「午後の出題範囲」です。

 

変更箇所表示板・試験の対象者像(抜粋)

変更箇所表示版・午後の出題範囲(抜粋)

 

1-1. チームメイキングの重要性アップ


「試験の対象者像」の「業務と役割」の中に

リスクや不確かさに対して、メンバーの多様な考えを活用

必要に応じてメンバーを支援して、メンバーの成長と自律的なマネジメント

チームのメンバーとプロジェクトの目的を共有

といった表現が盛り込まれていることから、

これまで以上にチームメイキングが重要視されていると読み取れます。

 

また「午後の出題範囲」の中に

リーダーシップ

という言葉が明確に追加されていることからも

チームを引っ張ってコントロールする役割が重要視されています。

 

チーム作りが重要なのは次に述べる

不確かさや変化に対応するために個々人が力や個性を発揮することが不可欠

と考えられているためだと思われます。

 

1-2. 変化や不確かさへの対応が必須

「試験の対象者像」の「期待する技術水準」の中に

プロジェクトを取り巻く環境の変化

最適な(中略)開発アプローチの選択、及びマネジメントプロセスの修整

リスクや不確かさに適切に対応する

といった文言が追加されました。

 

「午後の出題範囲」の中にも

リスク及び不確かさへの対応

変更の管理と変化への対応

が明記されています。

 

いずれもアジャイル型の開発アプローチを意図した改訂で

あることは疑いが無いと言えるでしょう。

 

さらに改訂について試験センターが述べている文章を引用します。

アジャイル型開発プロジェクトの増加、プロジェクトマネジメントに携わる者の業務と役割の変化を踏まえた変更(プロジェクトマネジメントの業務を、特定のプロジェクトマネージャが任命されて担う、チームの一部のメンバーで分担する、又は全メンバーで分担するといった多様な形態を想定)

 

ここでも DX 時代において変化の波を乗り切るには

PMを分担することまでも考慮に入れてチームで開発に携わることが必要

だと言っています。

 

1-3. 旧PMBOKのカラー低下

旧版であるPMBOK 第 6 版以前のカラーが

薄くなったように思いました。

PMBOK とは事実上のプロジェクト標準であり

2021年8月に最新版である第 7 版が登場しています。

 

「試験の対象者像」の「業務と役割」や「期待する技術水準」の中から

スコープ・要員・資源・予算・スケジュール・品質・リスク

といった旧版PMBOKの知識エリアを意味している言葉が

削られていたというのが根拠です。

 

新版の PMBOK 7 版ではアジャイルを意識した変更が

施されています。

では旧版での 10 の知識エリアを始めとする PMBOK のノウハウは

どうなるのでしょうか?

これについては後述の「今後の試験対策」で解説したいと思います。

 

2. アジャイルの台頭へのIPAの対応

IPAアジャイルの潮流についていろいろな情報発信をしていますが

まずは実務的なところから標準化を進めているように思います。

 

代表的な報告記事が下記です。

www.ipa.go.jp

 

モデル取引や契約書のひな型を公開しているので参考になります。

 

代表的なツールとして

  • 開発の体制図
  • 契約形態
  • 契約前チェックリスト

が掲載されています。

 

2-1. 開発の体制図


上記の体制図はさまざまなところで引用されている図だと思います。

プロダクトオーナー、スクラムマスター、ステークホルダーといった

用語はアジャイルに携わる以上覚えておくべき役割です。

 

IPAでは発注するユーザ企業がプロダクトオーナーを立て

受注するベンダ企業がスクラムマスターを立てることで

モデル化しています。

 

アジャイル開発を会社間をまたいで取り扱う場合のノウハウとして

抑えておいた方がいいポイントになります。

 

2-2. 契約形態

 

契約形態は、準委任契約が前提とあります。

これはユーザ側とベンダ側が共同で開発にあたる特徴があることから

請負契約だと偽装請負を疑われる危険性があるためです。

詳しくは上述の記事内を確認いただければと思いますが、

今後の論文試験などでアジャイル開発の契約面を論述する場合は

特別な事情がない限り準委任契約であることを明記するのがよいでしょう。

 

2-3. 契約前チェックリスト

 

契約前チェックリスト(抜粋)

 

契約前チェックリストとして9つの項目が定義されています。

契約前の当事者間でチェックを行い開発対象がアジャイル開発に

適しているか認識を合わせるために用います。

あまり項目も多くないので全て目を通しておきましょう。

 

3. 今後の試験対策

今後のPM対策として次の3点をあげます。

 

  • 組織・コミュニケーション・ステークホルダを重点対策する
  • アジャイル用語を習得する
  • 他区分のアジャイル実例を参考にする

 

3-1. 組織・コミュニケーション・ステークホルダを重点対策する

PMBOKの知識エリアでいうところの

組織・コミュニケーション・ステークホルダを重点対策しましょう。

 

激しい変化の波に対応するアジャイル開発において

チームメイキングが重要であるためです。

 

組織・コミュニケーション・ステークホルダの論文対策は

以下記事を参考にしてください。

studyrolerole.hatenablog.jp

 

3-2. アジャイル用語を習得する

当然ですがアジャイル型のプロジェクト管理に対応するには

アジャイル用語に精通している必要はあります。

 

アジャイル用語の参考資料■
若干文字が多いですが IPA がまとめている資料が参考になります。
アジャイル開発の進め方 (ipa.go.jp)

 

前章でも述べた役割用語(プロダクトオーナー、スクラムマスタ等)の

他でいうとスプリント(反復的な開発期間)や

バックログ(開発対象の候補一覧)などは

基本的な用語であり押さえておいた方が良いです。

 

最近ではインセプションデッキ(開発の初期段階で

目的等の共通認識を得るためにセットされる打合せなどの手法)

が午前II問題で問われていました。(SA区分)

 

さらにPMBOKの最新版である第7版と旧版を比較して

分析するのもよい勉強になると思います。

 

以下記事を参照ください。

products.sint.co.jp

 

記事の中に旧版の"10の知識エリアは水面下になった"が、

代わりに"パフォーマンスドメイン"という考え方が観点として

浮上したとあります。

 

パフォーマンスドメインはステークホルダやチーム運営など

8つの活動領域を示しています。

10の知識エリアと重複するキーワードとしては

ステークホルダやチーム運営があります。

こうした根拠もあり今後も

組織・コミュニケーション・ステークホルダは

重要なマネジメント対象であり続けると思われます。

 

3-3. 他区分のアジャイル実例を参考にする

PM区分では午後IIにおいてアジャイルをキーワードとした

題材の出題はされていませんが

SA区分では令和3年度に出題されています。

 

studyrolerole.hatenablog.jp

 

論文内で求められる振る舞いはスクラムマスタです。

プロジェクトマネージャとしてはアジャイル開発体制において

どの立場での振る舞いを期待されるのかはまだ

わかりませんが、他区分の出題例を見ることにより

推し量ることはできると思います。

 

個人的にはプロダクトオーナーの立場、

またはアジャイル開発をとりまく役割の分担を

どのように取り仕切ったかといった立場での

論述を求められるのではないかと思います。

 

その理由はIPA

PMを分担することまでも考慮に入れてチームで開発に携わることが必要

だと言っているからです。

 

おわりに

 

いかがでしたでしょうか?

PM合格を目指す方にとっては

アジャイルの出題形式・過去問がまだないことから

避けた方が無難と考える方もいるかもしれません。

 

しかし受験者数や出題数が少ないということは、

採点する側にとっても基準がまだ整備されていないので

頭一つでもきちんとアジャイルの理解を示せれば

するっと合格できる狙い目ともいえるかもしれません。

 

今後も、こういった知識を説明してほしい、特集してほしい

という要望があれば、ぜひコメント欄や問い合わせフォームからご連絡ください。

 

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ご検討ください。

 

それでは、皆さんの合格の報告を楽しみにしています!

ではそれまで。