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情報処理試験対策やIT業界への愚見・書評

プロジェクトマネージャー 予測型(AIシステム開発)プロジェクトのコストマネジメント【論文の書き方】(令和6年秋問1)

本記事ではプロジェクトマネージャーの午後II(論文)対策として、

令和6年問1で出題された過去問を分析します。

 

モチーフとして「AIシステム開発」を扱います。

 

実際に論文を書く上での考え方を整理し

論文骨子を設計するところまでやっていきます。

 

 

 

問題(令和6年問1)

過去問は試験センターから引用しています。

 

 

設問文は以下の通り。



 

何が問われているかを把握する

本問は最近頻出のテーマである「不確かさへの対応」の一形態です。

その中でもコストマネジメントに特化している点が特徴です。

 

設問アでは「不確かさ」の内容や「不確かさ」のある状況での

コストの見積りへの影響、コストへの要求事項、

ステークホルダと共有した認識について問われています。

 

設問イでは計画段階におけるコストの予測活動について

問われています。再見積りタイミングやステークホルダとの協力内容、

コスト差異の顕在時の対応方針などについて述べます。

 

設問ウでは実行段階におけるコストの調整について

問われています。実際の再見積りタイミングや発覚した差異の内容、

承認を得た差異への対応策などについて述べます。

 

 

 

出題要旨と採点講評からの分析

 

試験センターから公表されている出題要旨と採点講評を確認して

出題の意図と論述のNG例を把握します。

 

出題要旨

頻出のテーマである「不確かさへの対応」の一形態です。

その中でもコストマネジメントに特化している点が特徴です。

 

不確かさのある中で、コストの見積りは計画段階と実行段階で

食い違うことが多く、差異が発生することをあらかじめどう

カバーするのか、吸収するのかといったコントロールが求められます。

 

なお、「不確かさ」の背景として、

「事業改革の進め方が未定」「新たに適用するデジタル技術の効果が不明」

といった例が問題文では示されています。

 

見通しのつきづらい状況の中でプロジェクトをマネジメントできる

人材が待望されていることが分かりますね。

 

 

採点講評

はじめに「全問共通」の採点講評ですが、

正確な予測を妨げる要因や外部環境の変化について、以降の論述との関係性が不明確

というNG例が紹介されています。

「正確な予測を妨げる要因」は問1の「不確かさ」を示しており、

設問アで書いた「不確かさ」に対して

以降の論述=設問イやウとの関係性が不明確な論述は

NGであると示しています。

 

経験が感じられなかったりする論述

もNGであると示していますが、これは例年指摘されているものです。

当ブログでは何度も述べていますが、

受験者に「実際の経験」は不要です。

「経験があると感じさせる」論述が書ければよいです。

 

マネジメント手法の一般論に終始したり、マネジメントやリーダーシップのスタイルの一般的な特性を述べるにとどまったりする論述

もNGであると示しています。

 

具体的には、教科書や一般論をなぞっただけではなく、

問題文に与えられたテーマや状況と、

プロジェクトの特徴・独自性を踏まえた論述が書けていることが

ポイントです。

 

上記がピンとこない方は、本問を例にどのように論述して

ゆけばよいかを説明していきます。

 

 

 

問1の採点講評によると、

予測の精度を上げる活動については、ステークホルダとの協力を含む具体的な行動に関する論述

を期待したとあります。

最低限、ステークホルダを具体的に示したうえで、

プロジェクトマネージャーとして主体的・能動的に

調整を図り、不確かさを乗り越えた論文を書きましょう。

 

見積り手法に関して論述したり、抽象的な論述

はNGであったと述べられています。

コストマネジメントに意識を振られすぎると見積り手法(テクニック)

に終始しがちなので、プロジェクトマネージャーとして

周辺のマネジメント(統合管理)を意識した対応が

必要になることに注意しましょう。

 

 

論文を設計する

問われていることの概略を把握したら

自身の経験や用意してきた論文パーツに当てはめて

どのように論述を展開するかを設計します。

 

 

設問アの設計

設問アは「予算を含むステークホルダのコストに関する要求事項」

「不確かさ及び不確かさがコストの見積りに与える影響」

「影響についての認識をステークホルダと共有するために実施したこと」

について問われています。

 

問題文をよく読み、設問アの論述ポイントを確認します。

 

設問イ、ウでは「予測活動」の計画・実行について

論述することになるので、設問アでは「予測活動」に至る

背景について論述します。

 

書き方の一例としては、

まず具体的なプロジェクトにおける「不確かさ」について書き、

その内容が「コストの見積りに与える影響」について書きます。

次に具体的なステークホルダについて書き、

ステークホルダと「不確かな状況でプロジェクトを進める現状」を

意見交換の場やヒアリングを設けるなどして共有します。

最後にステークホルダから聞き出した、そうした状況における

「コストに関する要求事項」を書きます。

 

唯一の解ではありませんが、上記の順序で執筆すると

書きやすいと思います。

また、800字で書ききる必要がありますが、

比較的文字数オーバのリスクの大きい設問であるといえるでしょう。

 

本記事の場合は、「AIシステム開発」が

「不確かさ」の背景にあるとしています。

AIを新たに適用するデジタル技術として、

その効果がプロジェクト開始段階で不明確である、

という点を特徴とします。

 

AIを利用した開発プロジェクトにおいては、

  1. 教師データの品質や所要量が開発途中で判明する
  2. 商用化前のAPIやライブラリの変更
  3. 業務要件の途中変更(PoC結果による方向転換)

などが主だった不確かさです。

コストの見積りに与える影響としては、たとえば

  1. 教師データの不足や誤りには、再収集・前処理工程が延び、追加工数(コスト)がかかる
  2. 外部APIの仕様変更には実装変更・再検証が発生し緊急対応コストがかかる
  3. 業務要件の変更には要件再整理・モデルの再設計による追加コストがかかる

といった点が挙げられるでしょう。

 

 

設問イの設計

設問イは予測活動の計画について問われています。

具体的には、設問文では

「コストの再見積りのタイミングを決める条件」

「予測活動におけるステークホルダとの協力の内容」

「再見積りしたコストと予算との差異への対応方針」

を問われています。

 

一般論としては、仮にベンダーと契約してプロジェクトを

進める場合、PoC段階と商用化段階で契約形式を分けて

進めるケースが考えられます。

PoC段階では準委任型、商用化段階では成果報酬型といった

ような契約形態とすることが主流です。

なぜなら、不確かさのため業務要件や技術要素が流動的なので

請負契約は不向きであり、成果報酬と報酬の連動性を分ける形式が

効果的であるためです。

 

また別の一般論としては、

既知・未知のリスクに対してあらかじめ

コンティンジェンシー予備費やマネジメント予備費

見積りに含めていくことが考えられます。

この場合、再見積り時に当初見積りとの乖離(増額)があった

場合に、しかるべき変更管理プロセスを設け

予備費を充当することでリスクをコントロールすることになります。

 

採点講評によると

ステークホルダとの協力を含む具体的な行動

が重視されていることが分かります。

 

上述の一般論から推し進めると、

準委任型・成果報酬型の契約形態とするにはベンダーとの

合意形成が必要で、ベンダーがステークホルダとなります。

また、予備費の充当に関しては財務部や経営層の承認が

必要になることから、財務部や経営層がステークホルダとなり

あらかじめ認識合わせしておく必要があるでしょう。

 

本記事の場合は、「AIシステム開発」を

「不確かさ」の背景にあるとしています。

PoC段階で学習モデルや応答性の指標をあらかじめ設けておき、

たとえば2マイルストーン連続で未達だった場合に

「再見積りを発動させるトリガとする」というように論述を

展開すると、趣旨に沿った論文が書けると思います。

 

 

設問ウの設計

設問ウは予測活動の実行について問われています。

具体的には、設問文では

「実施した再見積りのタイミング」

「再見積りしたコストと予算との差異の内容」

「ステークホルダに報告して承認を得た差異への対応策」

を問われています。

 

計画フェーズで"基準"を定め、実行フェーズで生じた問題を

"基準をもとに対応する"という形はPM区分の

典型的な構図です。

 

たとえば計画フェーズにおいて、既知のリスク発覚時に

コンティンジェンシー予備費を充当するという

対応方針になっていたとしたら、

その具体的な内容や、予備費充当の具体的な条件などに

触れるとよいでしょう。

 

本記事の場合は、「AIシステム開発」を

「不確かさ」の背景にあるとしています。

PoC段階で再見積りトリガが発生したとしたら、

発覚リスク内容としてはたとえば「教師データの不足と

偏り」が生じて、追加工数・コストがかかる見積り結果に

なったことを示します。

またコンティンジェンシー予備費の充当の条件として、

充当するからには明確な成果条件が必要であり、

たとえばデータ処理の専門家を投入するなどといった

対策につなげるとリアリティが増すでしょう。

 

 

論文骨子

以上を踏まえ、論文骨子は次のようになりました。

■設問ア
 1.不確かさのあるプロジェクトにおけるコストに関する要求事項の整理
  1-1.プロジェクトにおける不確かさ
  ソフトウェアハウスのN社
  AIを利用したチャットボットを導入する計画
  不確かさ:
   ①応答に使用する教師データの品質や所要量が開発途中で判明
   ②商用化前のAPIやライブラリの変更
   ③業務要件の途中変更(PoC結果による方向転換)
  上記見解を整理の上、ステークホルダと意見交換の場を持つ
  1-2.コストに関する要求事項の確認
  コストの見積もりに与える影響:
   ①教師データの不足や誤りには、再収集・前処理工程が延び、追加工数(コスト)がかかる
   ②外部APIの仕様変更には実装変更・再検証が発生し緊急対応コストがかかる
   ③業務要件の変更には要件再整理・モデルの再設計による追加コストがかかる
  ステークホルダからのコストに関する要求事項:
   ①(経営層・事業部門)人件費と比較して効果に見合うコストであること
   ②(財務部門)コストの金額、支払いタイミングが妥当であること
   ③(ベンダー)不確かさの高い業務範囲において採算が確保できること
■設問イ
 2.計画段階で整備した予測活動の内容
  2-1.予測活動の内容
  PoCフェーズ、学習モデル精緻化フェーズ、本番導入フェーズに分け、
  スコープを仮置きして変更余地を持たせたまま見積りを行う。
  既知のリスクに関する予備費をコンティンジェンシー予備費
  未知のリスクに関する予備費をマネジメント予備費として
  あらかじめ見積りに含めておく。
  2-2.再見積りのタイミングを決める条件
  あらかじめ設定したフェーズごとに再見積りを行う。
  また、チャットボットによる回答精度が2マイルストーン連続で未達になるケース、
  応答時間が5秒を超える場合を再検討トリガーとして設定
  2-3.ステークホルダとの協力の内容と再見積り時のコスト差異への対応方針
  ベンダーとは準委任型、成果報酬型の段階契約形態として合意
  コスト差異への対応方針としての、予備費の取り扱いに付いてあらかじめ合意
■設問ウ
 3.実行段階で対応した予測活動の内容
  3-1.再見積りのタイミング
  プロジェクト開始して2か月後、PoCフェーズにおいて再検討トリガーが発動
  3-2.再見積りの結果発覚したコスト差異
  教師データの不足と偏りが出て工数が増加しておりコスト差異が発生
  コンティンジェンシー予備費の充当のため変更管理プロセスに沿って
  財務部門や事業部門・経営層に対し上申
  3-3.承認を得た差異への対応策
  承認条件として、経営層からは明確な成果条件を伴う必要があるため、
  教師データの前処理における精度向上のための専門家を投入
  その結果、次のマイルストーンでは回答精度を達成

論文全文について

ここまででも十分考え方はお伝え出来たかと思いますが、

論文全文を参考にされたい方は有料とはなりますが

以下記事の末尾をご参照ください。

note.com

 

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

本記事ではプロジェクトマネージャーの午後II(論文)対策として、

令和6年問1で出題された論文の書き方を紹介しました。

最近の出題傾向にあるプロジェクトの"不確かさ"がテーマであり、

その中でもコストマネジメントにフォーカスがあたった点が

特徴的な問題でした。

また、「AIシステム開発」というこれまた頻出のモチーフも

論文に絡めることができる例を示したつもりです。

ぜひ参考にしてください。

 

また、他の区分・過去問の【論文の書き方】の記事については

以下リンクを参照ください。

論文の書き方 カテゴリーの記事一覧 - スタディルーム by rolerole

 

今後も、【論文の書き方】記事を充実して参ります。

ではそれまで。

高度情報処理技術者 各区分の資格取得メリットについて

更新:2025/5/25

 

だんだんと蒸し暑い日も増えてきましたね。

春の情報処理試験も終わり、次は秋の試験です。

 

前回の試験を受けた方も、受けていない方も、

高度の情報処理試験を初めて受けるという方も、

何を受けよう?」と迷っていたり、

そもそも受けるメリットってなんだろう?」と思っていませんか。

 

本記事では、主に実際にエンジニアの若手~中堅として活躍されている方向けに、

  • 資格取得に興味はあるけど、費用対効果ってどれくらいあるんだろう?
  • 苦労して取得しても、意味が無かったら嫌だな。業務に活用できるの?
  • 基本情報(応用情報)は取得したけど、次はどの資格が狙い目なんだろう?

といった疑問にお答えしたいと思います。

 

筆者自身、エンジニアとして社会人経験を過ごし、

高度情報処理試験の全てをコンプリートしました。

実際の業務経験も踏まえながら、資格が役立った場面を紹介したいと

思いますので、参考にしてください。

 

 

■ATTENTION■
読んでくださる方のために、筆者のバックグラウンドを簡単に説明します。

✔ 社会人経験=エンジニア経験 20 年

業務カットの経験
✔ 社内の技術サポート
✔ フィールドSE(お客様御用聞き)
✔ システムインフラ保守・運用・構築
✔ エンタープライズ向けサービス開発・稼働維持・企画

技術カットの経験
✔ ネットワークやサーバーなどインフラ
✔ 簡単なプログラミング
✔ 自動化ツールの開発

転職経験
✔ あり(1回)

そんな筆者の視点から、各試験区分の取得メリットと、簡単な取得動機を説明します。
参考になるものがあれば幸いです。

 

0. 高度情報処理試験の全般的な取得メリット

まずは高度情報処理試験の全般的なメリットについて述べていきます。

各区分別のメリットを先に読みたいという方は、本章は読み飛ばしてください。

 

0-1. 基本情報の知識補強ができる

本記事は、基本情報試験は取得済みの方を想定しています。

基本情報技術者試験は、テクニカル系・マネジメント系・ストラテジ系と、

「広く浅く」知識を習得することができます。

 

そのため、使っていない知識はすぐに忘れがちです。

エンジニアとして長く活躍していきたいと考えている皆さんにとって、

キャリアのステップや仕事の内容によって、知識の使う・使わないは

明確に分かれます。

すると、使っていない知識は軽視され、忘れてしまいかねないですが、

高度情報処理試験を受けることで、再度その区分の勉強をすることになり、

知識の定着を図ることができます。

 

0-2. 高い奨励金を支給される場合がある

即物的なメリットとしては、奨励金です。

所属している会社や組織の方針もあると思いますが、

IT業界の会社の資格奨励制度には、

基本情報や高度情報の奨励金があり、

多くの場合、高度情報はより多くの奨励金がもらえます。

 

中には10万円以上の高額の奨励金が出ることもあり、

資格勉強のためにかかる参考書や通信教材のコストを差し引いても、

「純利益」が出る場合があります。

かくいう筆者も、資格取得を目指した最初のモチベーションはここにありました。

 

ぜひ、ご自身の所属する会社・組織の資格奨励制度を確認してみてください。

 

0-3. 自分の意見を後押しする根拠になる

社内や組織で、互いに資格を保有しているか否かという話題に

なることはありますか?

筆者の所属していた会社では、そこまで頻繁に話題に上ることは

ありませんでしたが、半期や通期の目標設定/上司面談で

資格取得に関するヒアリングもありましたので、

それを機に、同僚で情報交換が行われることがありました。

 

そうすると、自然と、社内の○○さんは資格を大量に保持しているらしい、

とか、○○さんと○○さんは高度の□□試験を受けるらしい、とか、

そういったうわさ話が耳に入ってくることがありました。

 

そのような空気感を前提に仕事をしていると、ふとした業務遂行上の

協議やディスカッションにおいて、○○さんは□□資格を保持しているから、

これに詳しいでしょう、と自分の意見を通してもらえたり、

決定権を渡してもらえたりすることがあります。

時には、ただの無茶ぶりもあるわけですが、それだけ慎重に避ければ、

高度資格を保有していると、それだけ有利・円滑に仕事を

進めていけることができるように思います。

 

 

0-4. 転職やポスティングに有利

情報処理試験は、歴史が長いことも有利に働きます。

制度自体は昭和40年代からの資格。

これは、いまベテラン以上の年代のエンジニアが

若手の頃からあった資格ということです。

彼らも全員が取得できた資格ではないので、

簡単な資格ではないことは知られています。

つまり人事部や転職先・ポスティング先のしかるべき役職に

ついているであろう方の目にも止まりやすい。

これは、自分の市場価値を高める上で、差別化しやすい

大変なメリットになります。

 

 

1. 各区分の取得メリットと動機付け

それでは本章から各区分の簡単な紹介と、

筆者の経験を基にした取得メリットと取得動機について

解説していきます。

 

1-0. 高度情報処理技術者試験の概要

前提として、試験の概要と形式に触れておきます。

ここは知っているよという方は、本節は読み飛ばしてください。

 

高度情報処理試験とは、IPAのレベル区分でレベル4に該当するものです。

f:id:createrolerole:20210615145119p:plain

高度区分は図中央のピンク部分。IPAより

全部で9種類の資格があり、試験時間は次の通り。

※ただしSC(情報セキュリティ安全確保支援士)だけは午後I・IIの区別が無く、12:30~15:00で150分の記述式の試験です。

f:id:createrolerole:20211130161910p:plain

長丁場。前の試験に落ちると次の試験には行けない。

午前Iは4択問題で30問。午前IIは4択問題で25問。午後Iは記述式。

午後IIは資格ごとに記述式か論述式かで分かれます。

 

なお、午前Iは免除制度があり、応用情報・高度の合格者ならびに午前I通過者は

2年以内であれば免除申請することが可能です。

 

 

以下、筆者の取得順に各試験について解説していきます。

受験予定の科目、気になる科目を中心にご確認ください。

 

1-1. 情報処理安全確保支援士のメリットと取得動機

略称 SC 実施時期 春・秋 午後の形式 長文読解
タイプ テクニカル系

難易度

(偏差値)

67
身につく本質スキル 脆弱性・脅威、リスクコントロール、定性・定量のリスク評価、セキュリティポリシーの定め方

 

■メリット■

 

あなたがアプリ寄りインフラ寄りいずれであっても、

意識しなければならないセキュリティに関する知識セットを

備えることができます。

セキュリティは近年ますます需要が高まっている知識分野の一つで、

取得メリットは極めて大きいと思います。

高度区分の中では難易度的にもとっかかりやすく、他の区分の試験でも

セキュリティの範囲は問われることが多いため、

初めて高度を取る方、今後複数の高度を取る予定の方におすすめです。

 

■筆者の取得動機■
 

当時、ファイアウォールなどのセキュリティを具備するシステムを

主に扱っていたため。

ポリシーベースの制御法は、セキュリティポリシーの実装の基礎ですので、

資格取得後は、隣の部のセキュリティ実装の助言をしたら

一目置かれるようになりました。

セキュリティに携わる実機を実際に触る方はオペレータとして、

自分の判断を交えずに淡々と処理することが重要ですが、

本資格があれば設計段階でセキュリティを加味させることや、

オペレータの負荷にならないような可読性の高いポリシー実装や資料化に

貢献することができます。

 

1-2. ネットワークスペシャリストのメリットと取得動機

略称 NW 実施時期 午後の形式 長文読解
タイプ テクニカル系

難易度

(偏差値)

67
身につく本質スキル OSI参照モデル通信プロトコル、ネットワーク図の読み書き

 

■メリット■

 

あなたがインフラSEならば、登竜門的・代表的な資格に値するので、

この資格を取得することで、システムの通信という

根本的な部分を理解していることを示せます。

また、あなたが自チーム外の活動も意識しなければならないとしたら、

OSI参照モデルとはそのまま組織やチーム分けの

前提になっていることも多いので、

この資格の知識を基に低レイヤと高レイヤを俯瞰視して

チーム間の橋渡し役を買うこともできるでしょう。

 

■筆者の取得動機■

ルータやスイッチなど、ネットワークアプライアンスの担当と

なったため。

実務ではIPアドレスの計算を人より早く

できることが信頼に繋がるように思います。

詳細で複雑なネットワーク図の読み解きも

できるようになり、一歩進めて相手の理解度に応じて

正確さと分かりやすさのトレードオフを調整しながら図おこし

できるようになりました。

 

■COLUMN■

■効率的な勉強法

情報処理安全確保支援士とネットワークスペシャリストは相性がよく、

重複して問われる要素があります。

情報セキュリティの脅威を考える上で、侵入"経路"とは

ネットワークに他ならないためです。

両者を両方取得するつもりなら、時間を空けずに

勉強すると効率がよいかと思います。

 

 

1-3. データベーススペシャリストのメリットと志望動機

略称 DB 実施時期 午後の形式 長文読解
タイプ テクニカル系

難易度

(偏差値)

67
身につく本質スキル ER図、関係スキーマ、正規化(特に第3正規化)

 

■メリット■

あなたがバックエンドのアプリSEであったり、

システム全体の設計を考慮してデータの配置をデザインする立場であれば、

データベースのテーブル設計手法やデータ呼び出しアプリケーションとの

関係を説明・提案できるようになります。

あなたがフロントエンドのアプリSEであったり、

インフラSEであったとして、実務に精通していなくても、

簡単なSQL文やDB設計書を読めるようになります。

 

 

■筆者の取得動機■

業務上必要だった訳ではありませんが、自身の知見を広げるために取得。

後年になり、システム保守の現場でSQL文やDB設計書に触れることがあり、

知識の効果を実感しました。

また、要件定義の段階でも、データ同士の1対1とか1対Nとかと

いった特徴を掴んで、第三正規化やER図の知識を活かして図おこしし、

関係者と認識の一致を図ることなどに、役立ちました。

 

1-4. プロジェクトマネージャーのメリットと志望動機

略称 PM 実施時期 午後の形式

長文読解

論文

タイプ マネジメント系

難易度

(偏差値)

69
身につく本質スキル PMBOKの実践、ウォーターフォール型開発のあるあるネタ追体験

 

■メリット■

あなたが上司に報告しなければならない立場であったり、

チームをまとめる立場にステップアップを考えていたりするならば、

本資格の取得勉強を通じて、上司への報告に使いやすいフレームワークや、

進捗管理や組織運営に必要なノウハウを学ぶことができます。

ネームバリューはもっとも高い資格。

転職やポスティングにも条件として

明示されていることが、基本情報を除くと最も多いように思います。

 

ちなみに、プロジェクト管理やチーム運営に特に大切なことは、

どんな分野に置いても、予め基準を決めておくこと。

こうすることで問題発生の予兆が掴め初動が

早くなり、対応が均質化され、判断コストが下がります。

基準が間違っていれば、修正すればよいです。

 

■筆者の取得動機■

資格の名の通り、プロジェクト管理を任されることが増えつつあったため。

にわとりたまごですが、実体験があった方が合格しやすいと思う反面、

先に合格レベルの知識を備えていると実際のプロジェクト管理も円滑にいくことも

あるように思います。

結論としては、「実体験は必須ではない」ですね。

 

また、プロジェクトは必ず終わりがあり、目標があります。

抜擢された若手が突然チームの目標を定めたりするのは

気恥ずかしく不安もありますが、PMBOKに代表される

フレームワークに過ぎないと思えれば、

淡々とこなしていくことが可能になると思います。

 

■COLUMN■

■筆者の体験談

私は当時はインフラレイヤのプロダクト知識が中心だったので、

プロジェクトマネージャーの想定する業務システム開発の知識を勉強するのが

最も苦労しました。

多くの論文事例集を読み込み、合格論文の"型"を掴んでいく勉強法をとりました。

 

■COLUMN■

■情報処理安全確保支援士との関係

プロジェクト管理にはリスク管理が重要で、

上司によってはリスクの報告をするだけで事足りるようなケースもあります。

リスク管理は安全確保支援士の知識が活用できるので

リスク分析や対応策の策定を論述する際などに、勉強し直して

みると効率的に思います。

 

 

1-5. ITサービスマネージャーのメリットと志望動機

略称 SM 実施時期 午後の形式

長文読解

論文

タイプ マネジメント系

難易度

(偏差値)

68
身につく本質スキル ITIL、変更管理、問題管理、インシデント管理

 

■メリット■

あなたがシステムやサービスの運用・保守を担当しているなら、

問題(インシデント)発生の暫定対処、根本対処の違いなど、

見過ごされがちな業務の中で必要な本質的な要素を理解できます。

あなたが運用・保守とは畑違いであったとしても、

運用・保守に引き継ぐべきフレームワークや重要な点を学べます。

また、ヘルプデスク運営が学べます。

 

■筆者の取得動機■

システムやサービスの運用・保守に携わっていたため。

運用側として、開発側からの受け入れ基準を整備することで、

断る理由を説明して、チームを守れたこともありました。

運用をしていると、一見無駄に思う業務が

たくさんありますが、資格を取得していると、

無駄に見えるけど必要な業務か本当に無駄な業務か

識別できるようになります。

 

1-6. エンベデッドスペシャリストのメリットと志望動機

略称 ES 実施時期 午後の形式

長文読解

論文

タイプ テクニカル系

難易度

(偏差値)

67
身につく本質スキル ハードとソフトの結合、組み込みシステムの利点と欠点への理解

 

 

■メリット■

あなたが組込みシステムの開発者であったり、

制御系システムやエッジデバイスのプロダクトSEであるならば、

本資格の知識を活かして、ハードやソフトの特性を改めて理解し、

より最適なシステム実装の提案ができるようになります。

IoTやセンサーネットワークが叫ばれ、

低コスト・高品質のエッジコンピューティングが

求められている昨今、業界によっては需要の高いスキルと思われます。

 

■筆者の取得動機■

エッジデバイスを駆使した

エンタープライズ向けサービスを担当したため。

既製品プロダクトをカスタマイズする際にも会社間、組織間の責任分界点を、

契約書ベース以外に、技術的な領域で整理して

理解・説明できるようになったと思います。

 

出題は、駅の改札口やドローン、自動運転システムや駐車場システム、

自動音声案内ロボットなど、身近な題材が多く、興味をもって

取り組みやすかったです。

 

1-7. システム監査技術者のメリットと志望動機

略称 AU 実施時期 午後の形式

長文読解

論文

タイプ マネジメント系

難易度

(偏差値)

70
身につく本質スキル リスクとコントロールと監査手続

 

■メリット■

あなたが監査側の業務に携わる人ならば、

監査そのものの意義や原則(独立性や追跡性)、

監査人としてのふるまいを改めて学べます。

あなたが監査される側の人ならば、

求められる監査記録や対応について学べ、

システムログや議事録や管理基準の整備の必要性が学べます。

 

■筆者の取得動機■

いまいち監査の必要性が自分にも理解できていなかったため。

持続可能な組織を実現するためには、

監査の手続きが古来から有効だったということが認識できました。

取得することで、普段の運用や開発の業務時も

監査に求められる記録を意識して振る舞えるようになり、

定期・不定期の監査への対応にも余裕をもって

臨めるようになりました。

 

■COLUMN■

■プロジェクトマネージャーとの関係

プロジェクトマネージャーが、基準を整備することで

リスクをコントロールしているとしたら、

システム監査技術者はその基準と対応記録を査閲して

適切にコントロールされているかを確認する立ち位置になります。

論文執筆時には、こうした立場を明確にする必要があります。

 

1-8. ITストラテジストのメリットと志望動機

略称 ST 実施時期 午後の形式

長文読解

論文

タイプ ストラテジ系

難易度

(偏差値)

71
身につく本質スキル 情報戦略、BSC、マーケティング、プロモーション戦略、KPIの設定方法

 

■メリット■

あなたが管理職であるなど、技術者集団から一歩離れて

経営陣に近いところで執務しているならば、

本資格の知識を活かして情報戦略策定に関われます。

情報システムの経営に対する有効性の説明、KPIを設定して

成果のモニタリングをデザインできるようになります。

あなたが一技術者であったとしても、企画や戦略の

意図を理解しやすくなることになり、

これにより、部門横断的な取組みや、

既存システムの改善提案もしやすくなるでしょう。

 

■筆者の取得動機■

エンタープライズ向けシステムの

企画業務に従事するようになったため。

既存システムの保守費用を捻出するのに、

システムの意義や目標を踏まえて上司経由で経営側を

説得する必要がありましたが、どんな説明が求められているか

"あたり"をつけられるようになりました。

 

時々、まったく型にはまらない方もいて、その方専用の

説明資料を作る必要があることもありましたが・・・

 

■COLUMN■

■PM・SM・AUとの関係

ウォーターフォール型の開発モデルでは、

ITストラテジストが企画・要件定義フェーズに関わり、

プロジェクトマネージャーが要件定義~実装フェーズに関わり、

ITサービスマネージャーが運用テスト以降の受け入れと実際の運営を担うことになります。

システム監査技術者は上述のどのタイミングでも

コントロールが利いているかを検証する訳ですが、

出題として多い・実業務現場として監査の有効性が高いのは

やはりプロジェクト管理のフェーズのようです。

 

1-9. システムアーキテクトのメリットと志望動機

略称 SA 実施時期 午後の形式

長文読解

論文

タイプ テクニカル系

難易度

(偏差値)

68
身につく本質スキル UML図、デザインパターン

 

■メリット■

あなたがどんな形であれシステム開発に関わる方なら、

システムに採用する実装技術の利点と欠点への理解が深まります。

また技術のフィージビリティの評価ができるようになります。

 

■筆者の取得動機■

高度区分の試験全制覇!

開発系の業務は最近は離れてしまいましたが、

世にあるプロダクトや技術を組み合わせて

自分の手で検証、実装するのはエンジニアの醍醐味と思います。

 

 

おわりに

いかがだったでしょうか?

資格取得の費用対効果や、基本情報(応用情報)の次に何を取ろうか

迷っている方に向けて有益な情報となっていたら幸いです。

各試験のメリットを記載したので参考にしていただき、

ご自身のキャリアプランに合わせて、

最適な資格を選択していくことが、費用対効果も最大化されることになる

と信じています。

 

本ブログでは、高度情報処理試験の、合格に向けたサポート記事を充実していきます。

「読者になる」ボタンで、ブログの更新時に通知されますので、ご検討ください。

 

是非、一緒に頑張りましょう!

 

ではそれまで。

システム監査技術者 IT投資のガバナンス監査【論文の書き方】(令和6年秋問1)

本記事ではシステム監査技術者の午後II(論文)対策として、

令和6年問1で出題された過去問を分析します。

実際に論文を書く上での考え方を整理し

論文骨子を設計するところまでやっていきます。

 

 

 

問題(令和6年問1)

過去問は試験センターから引用しています。

問題文はこちらです。

設問文はこちらです。

 

何が問われているかを把握する

本問題はIT投資のガバナンスにおける

監査について問われています。

 

IT投資のガバナンス自体の

目的や活動内容に「審査」や「評価」といった、

「監査」と混同しやすい側面があるので、

注意が必要です。

 

また組織のIT投資のガバナンスを論じる必要があるので、

IT投資の個別具体的な内容に踏み込みすぎると字数が不足しがちになり、

かといってガバナンスの監査という抽象論・一般論に終始すると

それが理由で合格に至らなくなってしまいます。

 

論述の抽象度に高いバランス感覚が求められ、

難易度の高めな問題といえそうです。

 

出題要旨と採点講評からの分析



試験センターから公表されている出題要旨と採点講評を確認して

出題の意図と論述のNG例を把握します。

 

出題要旨

第一文に

組織の価値向上及び事業継続の観点

と書かれています。

問題文の第一段落にも書かれていますが、

IT投資のガバナンスの重要性が高まっているところが

出題趣旨の背景にあります。

 

第二文に

IT投資の管理プロセスを整備、運用するとともに、IT投資のガバナンス体制で求められる役割を遂行する

と書かれています。

IT投資のガバナンス体制やプロセスについては、

ITガバナンスの成熟度を測るフレームワークであるCOBITに

通じていると論じやすいといえるでしょう。

 

第三文に

監査の着眼点及び入手すべき監査証拠についての論述

と書かれています。

「監査の着眼点及び入手すべき監査証拠」については

設問イとウの両方で問われています。

設問イとウの違いは、前者が「IT投資の管理プロセス」に、

後者が「IT投資のガバナンス体制」に関連付けて

述べるという点です。

 

 

採点講評

問1,問2共通の採点講評では

  1. 問題文の趣旨又は設問で求めている内容を踏まえていない論述
  2. 監査証拠が具体的ではない監査手続に関する記述
  3. 論文の体裁が十分整っていない

という3つのNG例が載っていました。

表現は若干変わりますが、昨年の採点講評とほぼ同じ内容でした。

 

2点目に関してですが、システム監査技術者試験では

必ず「監査手続」について問われます。

監査手続については、下記記事に基本をまとめているので、

不安な方は再確認しておきましょう。

システム監査技術者の論文対策(リスク・コントロール・監査手続) - スタディルーム by rolerole (hatenablog.jp)

 

問1の採点講評では、

  1. 個別のシステムやプロジェクトにおけるIT投資についての論述
  2. IT投資のガバナンス体制の記述が不十分(設問ア)
  3. 組織としての体制ではなく個別プロジェクトを対象とした監査に関わる記述(設問イ)
  4. IT投資のガバナンス体制に関連付けられなかったり、入手すべき監査証拠が具体的ではなかったりする記述(設問ウ)

がNGの例として挙げられています。

論述の具体度・抽象度の難しさについては冒頭の章

「何が問われているか把握する」でも述べていますが、

1. や 3. は個別的(具体的)すぎてNGとされている例です。

 

しかし一方で、一般論だけで論述しても合格は得られないので、

組織単位・会社単位での具体性も踏まえる姿勢も必要です。

 

一般論のみになりがちな時は「例えば」と前置きして

具体的に書くのも一つの手段ですが、

それだけだと個別のシステム・プロジェクトについての

監査にとられかねないので乱発は危険でしょう。

 

■論文の文字数■
システム監査技術者は他の区分と異なり、設問イと設問ウの
指定文字数が一緒です。(700字~1400字)
他の区分は設問イと設問ウで指定文字数が異なっていることが多いので、
いくつかの区分を受験予定・受験中の方は注意しましょう。

 

論文を設計する

問われていることの概略を把握したら

自身の経験や用意してきた論文パーツに当てはめて

どのように論述を展開するかを設計します。

 

 

設問アの設計

設問アは「IT投資の概要」と「ガバナンス体制」に

ついて問われています。

 

「IT投資の概要」は個別・具体的な投資の内容ではなく、

組織におけるIT投資の期待値を意識して書きましょう。

IT投資への期待値を書くことにより、

「ガバナンス」の要求度が高まるので

「ガバナンス体制」に自然に繋げることができます。

 

「ガバナンス体制」は一般的には、

経営層、CIO、IT部門、事業部門など、「運用側」に立つ

主体を書きましょう。

 

内部監査部門、外部監査人、第三者評価機関など、「評価側」に

立つ主体はここでは書かないようにします。

 

 

設問イの設計

設問イと設問ウはどちらも「監査の着眼点及び入手すべき監査証拠」に

ついて問われていますが、設問イの指定は

「IT投資の管理プロセスに関連付けて」述べることです。

 

問題文の第二段落をよく読み、「組織のIT投資所管部門」が整備、

運用している「IT投資の管理プロセス」について論じます。

少なくとも、「IT投資所管部門」がどこにあたるのかは

具体的な部署を明記して進める必要があるでしょう。

 

また問題文には

事業戦略及びIT戦略で設定された目標を達成するようIT投資計画を策定し、その計画に基づいて、ITに関する開発プロジェクト、基盤構築、人材育成などに投資する

とあります。これは「IT投資の管理プロセス」の例として、

計画フェーズと実行フェーズがあることを示しています。

 

さらに

IT投資に対する効果を評価し、評価結果に応じてIT投資計画を見直す

とあります。

これは「IT投資の管理プロセス」の例として評価フェーズがあることを

示しています。

 

ガバナンスの重要性で言えば、計画フェーズ、評価フェーズ、実行フェーズ

の順の重要度であると思います。

最低限、計画フェーズにおける「IT投資の管理プロセス」を

論じるようにしましょう。

 

また、それぞれのフェーズにおける監査の着眼点と監査証拠の例を

表にまとめます。

  監査の着眼点の例 監査証拠の例
計画フェーズ IT投資がIT戦略に沿っているか 企画書と経営計画の整合記録
評価フェーズ IT投資完了後に目標を達成しているか 本番運用後のレビュー記録や効果検証報告書
実行フェーズ IT投資の進捗と成果が適切か PJ定例報告書や成果レビュー記録

システム監査人は上にまとめた着眼点をもとに監査証拠を入手し

ガバナンスが機能していることを監査します。

 

設問ウの設計

設問ウも「監査の着眼点及び入手すべき監査証拠」に

ついて問われていますが、設問ウの指定は

「IT投資のガバナンス体制に関連付けて」述べることです。

 

ガバナンス体制は設問アでも述べているので引用する形で

述べましょう。

 

また問題文の第三段落は「IT投資所管部門がガバナンス体制で

求められる役割」について述べられているので、よく読み

論旨に盛り込むようにしてください。

 

問題文には

取締役会などにおけるIT投資に関する意思決定に貢献することが重要になる

と記載されており、取締役会という形で経営層が関与します。

このことから、ITストラテジストの受験・合格経験者であれば、

経営層との繋がりをイメージしやすく、書きやすい設問だと思います。

 

また、経営の意思決定への貢献や経営からの指示対応に関し

ガバナンスが機能しているかを確認する監査の着眼点や監査証跡については

たとえば次のようなものが考えられます。

着眼点:IT投資所管部門による審議や評価内容が適切であったか

監査証跡:審議議事録、経営会議向け報告書

 

論文骨子

ここでは、参考として論文骨子の例をご紹介します。

■設問ア
 1.IT投資の概要及びガバナンス体制
  1-1.IT投資の概要
   スーパーマーケットS社
   IT投資による経営目標
   ・ポイントカードやセール・クーポンをデジタル化し、
    顧客接点増加・顧客満足度向上を狙い売上を高める
   ・大規模災害に対するレジリエンスを持ち、ITシス
    テムの中断からくる業務影響を防ぎ機会を維持する
  1-2.ガバナンス体制
   ・CIO
    IT戦略を策定する。
   ・IT投資委員会
    IT投資の案件について、審査を行う。
    IT投資の管理プロセスを整備、運用する。
   ・営業部門、商品部門 
    情報システム部門と強調し、IT投資の案件の企画・実行を担う。
   ・情報システム部門
    IT投資の要件としてとりまとめる。
■設問イ
 2.IT投資のガバナンス監査(管理プロセス)
  2-1.審議プロセス
  監査の着眼点
  ・IT投資の案件が、IT戦略に沿ったものであること
  入手すべき監査証拠
  ・IT投資の企画書と中期経営計画書との整合記録
  2-2.実行プロセス
  監査の着眼点
  ・IT投資の進捗と成果を測定・レビューしていること
  入手すべき監査証拠
  ・プロジェクト定例報告資料や成果レビュー会議記録
  2-3.効果測定プロセス
  監査の着眼点
  ・目的に沿った効果が出ているか検証していること
  入手すべき監査証拠
  ・本番運用後のレビュー記録や効果検証報告書
■設問ウ
 3.IT投資のガバナンス監査(ガバナンス体制)
  3-1.IT投資委員会の審議機能
  監査の着眼点
  ・IT投資委員会による審議や評価が適切であったか
  入手すべき監査証拠
  ・審議の議事録や経営会議向け報告書
  3-2.経営陣への報告と経営陣からの指示対応
  監査の着眼点
  ・経営陣への報告と経営陣からの指示対応が適切であったか
  入手すべき監査証拠
  ・経営陣への答申書や添付資料、議事録

 

論文全文について

ここまででも十分考え方はお伝え出来たかと思いますが、

論文全文を参考にされたい方は有料とはなりますが

以下記事の末尾をご参照ください。

note.com

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

本記事ではシステム監査技術者の午後II(論文)対策として、

令和6年問1で出題された過去問を分析しました。

ガバナンス体制という組織の重要な機能が

きちんと働いているかを監査する問題でした。

 

また、他の区分・過去問の【論文の書き方】の記事については

以下リンクを参照ください。

論文の書き方 カテゴリーの記事一覧 - スタディルーム by rolerole

 

今後も、論文の書き方記事を充実していきます。

ではそれまで。

システムアーキテクト 午後I・午後II 出題 振り返り速報 令和7年春

情報処理技術者試験、受験された方、お疲れ様でした。

 

本ブログでは出題予想をしておりますので、

本記事にて出題予想に対して午後I・午後IIの評価を中心に行います。

 

なお、過去問は試験センターからダウンロード可能です。

www.ipa.go.jp

 

 

午後I 振り返り

午後Iでは下記の三問が出題されました。

問1 消耗品の集中購買化とそれに伴う業務システムの新規構築
問2 営業活動を支援するシステム
問3 不動産売買仲介システムの再構築

 

 

午後Iの事前の出題予想と評価は次の通りです。

 

■午後I出題予想と評価■
1. 1問か2問はDB系のスキルがあると有利な問題が出題される → 的中せず。今回はDB系の設問は無かった
2. 1問はST系の問題が出題されそう → 問2, 問3がST系の設問であった

 

 

なお、過去5年分の過去問は下記の通りです。

過去問分析(5年分)



午後II 振り返り

午後IIでは下記の二問が出題されました。

問1 複数の情報システムのデータを収集する必要がある指標の提供について
問2 現行システムと新システム間の差異を踏まえたデータ移行について

 

 

 

午後IIの事前の出題予想と評価は次の通りです。

 

■午後II出題予想ポイント■
1. DXやアジャイル開発を前提とした"攻め"の問題が出題されそう
2. 既存システムへの改修など"守り"の問題が出題されそう
 → 今回、問1は業務目標の達成指標(KPI)に関わる、企画・戦略寄りの上流の問題が出題された。問2はデータ移行時の課題という、実装寄りの問題が出題された

 

 

なお、過去5年分の過去問は下記の通りです。

過去問分析(5年分)

総評

午後Iは昨年次にDB系の比重が多かった傾向とは異なり、出題がありませんでした。ST系の出題が多く出題されていました。

午後IIは"攻め""守り"というよりも、問1が"上流・戦略"のテーマ、問2が"下流・実装"のテーマでした。

 

 

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それでは、ともに頑張りましょう。

 

ではそれまで。

ITストラテジスト 午後I・午後II 出題 振り返り速報 令和7年春

情報処理技術者試験、受験された方、お疲れ様でした。

 

本ブログでは出題予想をしておりますので、

本記事にて出題予想に対して午後I・午後IIの評価を中心に行います。

 

なお、過去問は試験センターからダウンロード可能です。

www.ipa.go.jp

 

 

午後I 振り返り

午後Iでは下記の三問が出題されました。

問1 スタートアップ企業におけるITを活用した新たなビジネス領域の開拓
問2 ITを活用した子育て支援の強化
問3 ドラッグストアにおけるITを活用した新規サービスの立ち上げ

午後Iの事前の出題予想と評価は次の通りです。

 

■午後I出題予想と評価■
1. 問1は先端技術や新流行のビジネスモデルが出題されそう → 問1ではスタートアップ企業のテーマとしていた
2. 問2・3はどちらかが文章(マネジメント系)、どちらかが図表(テクニカル系)の読解力が求められる問題が出題される → 問2,3が文章系、図表系は問1であった

 

なお、過去5年分の過去問は下記の通りです。

過去問分析(5年分)

午後II 振り返り

午後IIでは下記の二問が出題されました。

問1 基幹システムの刷新方法の策定について
問2 DXの企画策定について

午後IIの事前の出題予想と評価は次の通りです。

 

■午後II出題予想と評価■
1. 問1は先端技術や新流行のビジネスモデルによる"攻め"の問題が出題されそう → 問2でDX(デジタルトランスフォーメーション)が出題された
2. 問2は既存業務やプロジェクトを前提とした"守り"の問題が出題されそう → 問1が比較的"守り"よりの出題だった

 

なお、過去5年分の過去問は下記の通りです。

過去問分析(5年分)

 

総評

午後Iは問1でスタートアップ企業を舞台にAIが出題されるなど先進テーマが出題されました。図表は問1しか見られず、問2,3は比較的図表というより文章読解に特化したマネジメント寄りの出題であったと思います。

午後IIは問1と問2で先進テーマと従来テーマが出題されました。問1と2で最近の傾向と逆の順の出題となりましたが、内容面はそれほど特筆すべき傾向は無かったように思います。

 

 

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それでは、ともに頑張りましょう。

 

ではそれまで。

システムアーキテクト 人手依存の業務への先進技術の適用について【論文の書き方】(令和6年春問1)

 

本記事ではシステムアーキテクトの午後II(論文)対策として、

令和6年問1で出題された過去問を分析します。

実際に論文を書く上での考え方を整理し

論文骨子を設計するところまでやっていきます。

 

 

 

問題(令和6年問1)

過去問は試験センターから引用しています。

 

 

設問文は以下の通り。



 

 

何が問われているかを把握する

本問は人手依存の業務に対し先進技術を適用することで

どのように大幅に効率化・自動化したかについて主に

問われています。

 

設問アは「業務の内容」に加え「その業務が人手によってしか

実現できないと考えられていた理由」について問われています。

この理由部分が、設問イで論じる「大幅な効率化や自動化が

可能と考えた理由」と対応している必要があります。

 

設問イは「どのような先端技術をどのように適用したか」と

「大幅な効率化や自動化が可能と考えた理由」について問われています。

前者は選定した先端技術と情報システムへの具体的な実装方法を

論じます。

後者は設問アの理由(人手によってしか実現できないと考えられて

いた理由)を打ち消せる論拠が必要となります。

 

設問ウは先端技術の適用時の「課題」と「対策」について

問われています。

 

 

出題要旨と採点講評からの分析

 

試験センターから公表されている出題要旨と採点講評を確認して

出題の意図と論述のNG例を把握します。

 

出題要旨

 

出題要旨の1段落目に枠で囲った部分には、

先進技術を容易に利用できるようになってきたことに伴い、

認識と判断のデジタル化の難しさや費用対効果が小ささの障壁が

緩和されてきたことを述べています。

つまりは本問の背景・前提となる要素がまとまっています。

 

2段落目には3つの設問で問うている事柄が端的にまとめられています。

従来人手によってしか実現できないと考えていた理由 → 設問ア

どのような先進技術をどのように適用して大幅な効率化や自動化を可能にしたのか → 設問イ

その適用の際に生じる様々な課題への対処方法 → 設問ウ

 

 

採点講評

 

「全問共通」の採点講評の2文目にはNG例が書かれています。

問題文に記載してあるプロセスや観点などを抜き出して一般論と組み合わせただけの表面的な論述

実施した事項を論述するだけにとどまり、実施した理由や検討の経緯が読み取れない論述

上記はいずれも、システムアーキテクト区分に限らない、論文系の区分の一般的な注意事項でもあります。

 

前者は、論述するシステムやプロジェクトの特徴を踏まえていない論文がNGと評価されることを言っています。

後者は、実施したことのみ論述する"したした論文"になってしまい論拠を説明できていない論文がNGと評価されることを言っています。

 

いずれも論文の基本的な作法や経験によって払拭できる注意点なので、論文作成時に意識して取り組みましょう。

 

 

問1の採点講評の3文目には次のNG例が紹介されています。

単なる作業を"入力業務"や"議事録作成業務"などとし、本来の業務目的を深く理解しないで論述していた

対象の業務がどのような目的のものか深く理解して論述する必要があります。

5文目にはOK例として、

銀行における振込依頼のための手書き依頼書の登録業務

と紹介されています。

 

テクニックとしては、基幹業務などの名称を意識すると良いと思います。

販売業務、受注業務、在庫管理業務、財務管理業務、購買業務などなど、

どのような業態においても発生するであろう業務を念頭に置き、

論述対象とする業務がどの部分にあてはまるのかを説明すると良いでしょう。

 

また6文目にはNG例として、

実現した場合の効果である工数削減やコスト削減、信頼性向上を述べるにとどまり、大幅な効率化や自動化が可能と考えた理由に触れていない論述

が紹介されています。

工数削減・コスト削減・信頼性向上などの指標は重要ですが、

それだけですと単にシステム構築・システム改善した場合との差が

採点者が評価できなくなってしまいます。

 

論述対象の業務、システムの特徴を踏まえ、とりわけ、

人手によってしか実現できないと考えられていた業務を

デジタル化したからこそ大幅な自動化・効率化に至るという

骨子で説明するとよいでしょう。

 

 

 

 

論文を設計する

問われていることの概略を把握したら

自身の経験や用意してきた論文パーツに当てはめて

どのように論述を展開するかを設計します。

 

 

設問アの設計

設問アは「業務の内容」と「その業務が人手によってしか実現できない

と考えられていた理由」について問われています。

 

「理由」については問題文に次のように例示があります。

認識と判断のデジタル化の難しさや費用対効果などの理由

 

さらに問題文の中盤に、「次のような業務への適用が考えられる」

としていくつか例示があります。

これらの例についても「理由」を考え付くヒントになります。

人手必須と考えられていた業務と理由(具体例)

なお、設問アの「理由」の部分は設問イで問われる

「大幅な効率化や自動化が可能と考えた理由」と

対応している必要があります。

 

以上のことに注意して論述するには、

「業務」自体への理解度が必要です。

受験者自身にとってなじみにある業界や興味のある業務など、

説得力を持たせることのできる題材を選びましょう。

 

 

設問イの設計

設問イでは「どのような先端技術をどのように適用したか」と

「大幅な効率化や自動化が可能と考えた理由」について

問われています。

 

どのような先端技術をどのように適用したか

 

問題文には「先端技術」の例として、第一文に

認識AI、生成AI、RPAツール

が紹介されています。

AIで2種類紹介されていることからも、単なる「AI」とだけ

論述することの無いようにしましょう。

 

また先端技術を「どのように」適用したかの部分ですが、

書きやすい論文構成としては、先端技術を適用した

情報システムについて説明する方法でしょう。

 

たとえば、2-1.節で採用した先進技術と適用した方法とし、

先進技術をどのように情報システムに組み込み、業務上は

どのようになるかを論述します。

 

その後、2-2.節で大幅な自動化と効率化が可能と

考えた理由を書く方法が考えられます。

 

大幅な効率化や自動化が可能と考えた理由

 

採点講評に下記のNG例があることを思い出しましょう。

実現した場合の効果である工数削減やコスト削減、信頼性向上を述べるにとどまり、大幅な効率化や自動化が可能と考えた理由に触れていない論述

 

先端技術を適用しても、工数削減・コスト削減・信頼性向上を述べるだけ

では不十分です。

 

設問アで述べた「人手によってしか実現できないと考えられていた理由」が

先端技術を適用できたからこそ大幅な自動化・効率化を達成したという

骨子で論述するようにしましょう。

 

たとえば、次の具合です。

「対象業務」自動車部品メーカーにおける加工・成形・組立業務

「人手によってしか実現できないと考えられていた理由」熟練工による素材や種類に応じた微妙な力加減やキズや歪みの検出が必要とされていたから

「採用した先端技術」AIを搭載したプレスブレーキがセンサーと連携し、リアルタイムに素材特性を分析し、最適な圧力や角度補正を自動計算する

「大幅な自動化と効率化が可能と考えた理由」長期的にはAIの学習が進み熟練工の経験則に寄らない生産体制が築けるため

 

論述の対象とする業務の特徴や制約を踏まえ、

一般論にならない理由を根拠として論述できるようにしましょう。

 

設問ウの設計

設問ウは「課題」と「対策」が問われています。

問題文にも例があるので確認しましょう。

課題と対策(具体例)

課題の設定については、「先端技術を適用するにあたり生じた課題」

である必要があることに注意しましょう。

情報システムを構築・運用する上での一般的な課題では

題意を満たすことは難しいです。

 

 

論文骨子

論文骨子の一例を示します。

■設問ア

 1.人手によってしか実現できないとされていた業務

  1-1.業務内容

  自動車部品メーカーA社。

  自動車部品の製造工程における、加工・成形・組立・品質管理業務。

  1-2.人手を介す必要性が拭えなかった理由

  ①加工工程では素材の種類や厚みによって微妙な力加減が必要、

   職人が経験を頼りに調整を行っていた。

  ②品質管理工程では製品の表面にキズや異常が無いかを目視で確認、

   微細なキズや歪みの検出は熟練工の感覚によるところが大きい。  

■設問イ

 2.先進技術の適用

  2-1.採用した先進技術と適用した方法

  ・加工・成形条件を導出するRPAツールとAI

  ・加工・成形機械に搭載するセンサー

  ・画像認識AIと高精度カメラ

  2-2.大幅な自動化と効率化が可能と考えた理由

  ・属人性の高い業務の脱属人化・自動化

   設計工程で作られるCADデータをもとにAIが加工・成形条件を

   導出するようになるため

  ・生産効率性の向上

   熟練工に依存する生産体制が改善されるため

■設問ウ

 3.先進技術を適用した際の課題と対策

  3-1.先進技術を適用した際の課題

  ①AIモデルの過学習やバイアスの課題

  ②データ管理の課題

  3-2.対策

  ①普遍的・定量的なデータ収集

  ②セキュリティ対策

 

論文全文について

ここまででも十分考え方はお伝え出来たかと思いますが、

論文全文を参考にされたい方は有料とはなりますが

以下記事の末尾をご参照ください。

note.com

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

本記事ではシステムアーキテクトの午後II(論文)対策として、

令和6年問1で出題された論文の書き方を紹介しました。

AIやIoTなどの先端技術をテーマにした背景に、

人手依存の業務を改善したという取り組みを経験した方は

選びやすかったものと思います。

 

私自身の受験記もまとめているので合わせて参考にしてください。

 

システムアーキテクトの合格秘訣まとめ■

 

また、他の区分・過去問の【論文の書き方】の記事については

以下リンクを参照ください。

論文の書き方 カテゴリーの記事一覧 - スタディルーム by rolerole

 

今後も、【論文の書き方】記事を充実して参ります。

ではそれまで。

ITストラテジスト 出題予想(令和7年春)(最新)

本記事では令和7年春向けのITストラテジスト

出題予想を行っています。

 

次回ITストラテジストを受験される方向けに、

  • 出題にはどのような傾向があるんだろう?
  • 次回にはどのような問題が出題される可能性があるのかな?
  • で、それらを午後I問題(記述)、午後II問題(論文)について知りたい!

といった疑問・要望にお答えしたいと思います。

 

なお、過去問は試験センターからダウンロード可能です。

www.ipa.go.jp

 

 

1. 午後I(記述)予想

過去問分析(5年分)

上図は過去5年分の過去問テーマ分析です。

午後Iは令和6年春より3問から2問選択することとなっています。

問1~3から自分にとって相性のよいものを選択しましょう。

 

午後Iの出題予想ポイントは次の通りです。

 

■午後I出題予想ポイント■
1. 問1は先端技術や新流行のビジネスモデルが出題されそう
2. 問2・3はどちらかが文章(マネジメント系)、どちらかが図表(テクニカル系)の読解力が求められる問題が出題される

順に説明します。

 

1-1. 問1は先端技術や新流行のビジネスモデルが出題されそう

過去5年を分析すると問1はデジタルトランスフォーメーション(DX)など

先端技術がテーマです。

令和5年はブロックチェーン、令和6年はデジタル経済圏がテーマでした。

IPAはDXに関するメッセージ・研究をたくさん発信していますが、

令和1~4年で連続してDXがキーワードとして出題された後に

令和5年で異なるキーワードで出題されたので、

今後は少し傾向が変わるかもしれません。

 

参考までに、IPAが発しているDX事例などを

まとめているサイトを紹介しておきます。

DXを推進する上での課題と対応事例に関する調査

 

1-2. 問2・3はどちらかが文章(マネジメント系)、どちらかが図表(テクニカル系)の読解力が求められる問題が出題される

問2・問3の過去問を分析すると、どちらかは図表のない問題が出題されています。

 

傾向としては、図表のない問題の方が文章からの読解力、

つまり自分で必要なキーワードを抽出し必要であれば

図や表におこして整理する力が求められると思います。

反対に図表のある問題は、文章と図表の対応付け、

図表そのものを読み取る力が求められるでしょう。

 

傾向として、図表のない問題はマネジメント系、

図表のある問題はテクニカル系であることが多いようです。

 

過去は以下の通りになっています。

  • 令和6年春 問2が図表無し
  • 令和5年春 問3が図表無し
  • 令和4年春 問3が図表無し
  • 令和3年春 問2が図表無し
  • 令和1年秋 問3が図表無し

 

 

■午後Iのオススメ参考書■

 

 

記述式の対策は解説が充実していることが重要なので、

その観点で「アイテック 重点対策」を評価してみますと、

  • 200ページ超の分量
  • 段階的に仕上げることができる仕組み
    (テクニック、作成例、実践、解説と節立てされている)
  • とりあげている過去問(解説)が多い

と、かなり充実しておりオススメです。

 

 

翔泳社 情報処理教科書」は比較的、午後対策に特化しています。

各章で知識体系を整理でき、

習得具合を節目節目にある小テストでチェックができます。

じっくりと知識を習得してからテスト対策をしたい方にオススメです。

 

 

 

 

2. 午後II(論述)予想

過去問分析(5年分)

上図は過去5年分の過去問テーマ分析です。

午後IIは令和6年春より2問から1問選択することとなっています。

問1~2から自分にとって相性のよいものを選択しましょう。

 

午後IIの出題予想ポイントは次の通りです。

 

■午後II出題予想ポイント■
1. 問1は先端技術や新流行のビジネスモデルによる"攻め"の問題が出題されそう
2. 問2は既存業務やプロジェクトを前提とした"守り"の問題が出題されそう

 

順に説明します。

 

2-1. 問1は先端技術や新流行のビジネスモデルによる"攻め"の問題が出題されそう

"攻め"や"守り"といった言葉遣いはイメージですが、

問1は新規投資や事業停滞打開など、事業として攻めの姿勢で

手段としてDXを用いる文脈での問題が出題されています。

 

過去の問題文に例示されているDX事例は以下の通りです。

  • 令和4年春
     保険会社における顧客健康データを活用した割引などの新サービス
  • 令和3年春
     流通業におけるICタグを用いた物流保管のプラットフォームサービス
     測量機器メーカにおけるドローンとAIを用いたサブスク監視サービス
  • 令和元年秋
     病院における音声認識とAIを活用した記録業務のデジタル化
     組立加工業におけるAR機器とIoTによる組立業務のデジタル化

 

令和5年春はDXに特化したものではなく、

ビジネスの変化の速さを背景に構築後のITシステムを

全体最適の観点から改修要望に対応するというものでした。

 

令和6年春はDXの集大成的な出題で、

AIやIoTといった新たな情報技術の採用を検討するという

題意でした。

 

実際の企業における経営課題は千差万別ですが、

ITストラテジストで出題される問題にはいくつかのパターンがあります。

"攻め"のパターンとして、上記の事例は読み込んで理解しておくと

よいでしょう。

 

 

 

2-2. 問2は既存業務やプロジェクトを前提とした"守り"の問題が出題されそう

問2は比較的保守的な文脈で出題されることが多く、

過去5年は以下のようなことが問われています。

  • 令和6年春 新しいビジネスモデルの策定
  • 令和5年春 システムリスク対応方針
  • 令和4年春 スケジュールの管理
  • 令和3年春 ステークホルダの意見調整
  • 令和元年秋 ビジネスモデル策定の支援

試験区分の領域としてはプロジェクトマネージャーの

知見・経験があると有利でしょう。

令和6年春は令和元年と同様、ビジネスモデルに関するテーマですが、

問1に比べると"守り"のテーマで書きやすい問題でした。

 

 

なお、本ブログでは論文の書き方シリーズで過去問分析と解法をまとめています。

合わせてご確認ください。

 

studyrolerole.hatenablog.jp

 

下記のカテゴリ一覧記事から、ITストラテジスト区分を探してみて下さい。

studyrolerole.hatenablog.jp

 

 

■午後IIのオススメ参考書■

 

 

筆者の場合、基本的に論文系の試験区分の試験対策には

このシリーズで準備しています。

 

とにかく、文の事例が豊富。

 

おすすめする点は、これにつきます。

論文で、どのように表現するべきか迷ったとき、

事例が豊富にあると、参考にしたり取捨選択して

自分のものにできたりします。 

 

 

 

 

おわりに

いかがだったでしょうか?

 

ITストラテジストを受験予定で、どのように対策を

進めればよいかの考え方の一助となれば幸いです。

 

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それでは、ともに頑張りましょう。

 

ではそれまで。